月は東に日は西に - Operation Sanctuary - SS/       「ちびうめ子ちゃん、連載開始」by BLUESTAR    「ちびうめ子ちゃん、連載開始」      うめだももの先生の人気マンガ、「ちびうめ子ちゃん」が7月1日朝刊から4コママンガとして     連載することになりました。昭和40年代の清水市(当時)を舞台に、ほのぼのとしてアットホーム     な世界が展開されるこの作品は、20世紀末に雑誌連載された後、テレビアニメとなりました。      テレビアニメの主題歌である「おどるドンドコドン」はいまやファミリーソングとして有名です。      そしてこの7月からは新聞連載が開始されます。どうかご期待ください。                            (中日本新聞2007年6月10日付朝刊より)    ・伝説の清水市を探して      「ちびうめ子ちゃん」の舞台は、20世紀当時の旧・日本国静岡県清水市が舞台である。そのた     め清水市イコール静岡県静岡市清水区と思いたくなるが、これは間違いである。      2003年4月に、旧・静岡市と旧・清水市が合併して新・静岡市が誕生した。いわゆる静清合     併である。この時点で両市が合併した人口は70万人を超えた。      2005年に、新・静岡市は指定都市となり、3つの行政区が設置された。旧・静岡市は葵区と     駿河区、旧・清水市はそのまま清水区となった。      2006年に、新・静岡市は蒲原町と合併した。合併した蒲原町は全域が清水区となった。      2007年時点でのデータは以下のようになる。      新・静岡県静岡市 人口約72万人 面積約1388平方キロメートル。      清水区 人口約24万人 面積 約242平方キロメートル。      (清水区の内旧蒲原町 約1万2000人、面積約14平方キロメートル)      清水区のうち旧清水市部分はこの時点では約94パーセント。      結論。清水市は、静岡市清水区のうち旧清水市部分でありそれは清水区の9割以上である。                            「ちびうめ子ちゃん研究レポート」(2007年)                 ★  2007年6月、蓮美市蓮美台区、渋垣家の朝。 「ねえ直樹。来月から新聞変えたいんだけどいいかな」 「ああいいぜ。元々たいしてよんでないしな。テレビ欄と4コママンガとスポーツくらいかな」 「ありがと直樹。・・・にしてももう少し読みなさいよ」 「はっはっは。なにをいまさら。それに新聞なんぞよまなくたって大学には入れる」  開き直る直樹に対してため息をつく茉理であった。 「開き直ってどうすんのよ、バカ直樹」 「・・・ところで茉理。今までうちは帝国新聞だったよな。どこに変えるんだ」  帝国新聞は全国紙で1000万部超の世界最大の日刊紙でもある。 「中日本新聞だよ」 「そういやコンビニでみかけたことがあるかなあ。でも何でだ」 「それなんだけどね。来月から新しい4コママンガになるんだって。ちびうめ子ちゃん」 「・・・ちびうめ子ちゃんていったら、あの、おどるドンドコドンのアニメだよな」 「そうそう。直樹よく知ってるねえ」 「・・・そういやあれって確か少女マンガだったよなあ。なるほどいかにも茉理らしいな」 「まあね。そういうことだから、いいよね」 「ああ。いいぜ」  直樹と茉理は従姉妹である。そして二人とも大学生である。  茉理の両親は中東に赴任しており、いまや二人暮らしである。  時折、二人の様子を見に、保奈美がやってきて食事を作ったりする。茉理も料理は苦手ではないが、 学園伝説の料理人とまで呼ばれた保奈美にはまだまだ及ばないのでありがたくごちそうになる。  保奈美は教師志望で教育学部である。毎日多忙なはずだが渋垣家に頻繁に現れる。  茉理の親友の大学生広瀬柚香も頻繁に現れる。柚香は、転入生でしかも、広瀬天文部部長の妹だ。 直樹に興味を持ちかなり仲良くなったこともあったが、結局直樹は最終的に茉理を恋人に選んだのだ。  茉理のもうひとりの親友である橘ちひろは、たまに茉理に会いに来る。  未来で多忙な日々を送っているようだが、毎日充実しているようである。 「よお、委員長」 「久住くん・・・その呼び方はそろそろやめてくれないかな」  蓮美駅前。二人はばったり秋山史緒(大学生)に遭遇した。 「すまん。長年の習慣はなかなかなおらんのだ」 「そうねえ。保奈美さんなんか直樹のことなおくんて呼ぶし。直樹がやめてくれっていっても直さないし」 「・・・藤枝さんも頑固なのね。ところでお二人は今日はデートかしら」 「単なる買い出しかな。あたしと直樹の場合、一緒にいる時間が基本的に長いし、恋人モードよりも家族 モードの時間のほうが長いし」 「へえ。そういうもんなんだ」 「まあね。ところでさ秋山さん、中日本新聞を取りませんか」 「ぉぃぉぃ茉理・・・」 「渋垣さん、いつから新聞の拡販担当になったのかしら」 「そういうわけじゃないけどね。実は来月からちびうめ子ちゃんが始まるんだって」 「・・・あれって少女マンガでしょ。新聞で少女マンガって珍しいんじゃない」 「でしょ。うちは来月から中日本新聞にしたんだけど」 「・・・検討してみるわ」 「・・・ところで、結先生、仁科先生、中日本新聞を取りませんか」  数日後。直樹と茉理は駅前で結先生・仁科先生と遭遇した。世間話もそこそこにいきなり勧誘に 突入する茉理である。 「・・・取りません」と結先生。 「右に同じく」と仁科先生。 「ええっ。どっどうして・・・」 「私も仁科先生も元々紙の新聞を読む習慣がないですから」 「まあね」と仁科先生。 「ないって・・・」 「私だと基本的にネットのニュースサイトでチェックすることがほとんどですし」 「私も似たようなものね。あとセルラーもちょくちょくみてるけど」 「セルラーってなんですか、仁科先生」と直樹。 「この時代の日本語でいうとケータイのことよ」 「へえそうなんですか」  ちびうめ子ちゃんの新聞連載開始のことを伝えると、さすがに驚いたようである。 「ちびうめ子ちゃんといえば21世紀を代表する名作ですからね。私だって名前ぐらいは知ってますよ。 確かこの時代の地名だと静岡市が舞台でしたね」 「あの、結先生。清水市なんですけど」 「清水市は2003年の合併で静岡市になりましたから、だからこの時代ってちゃんといいましたよ」 「えっ。合併って・・・そんな」 「そういうわけで、この時代の地名でいうと、ちびうめ子ちゃんは静岡市清水区ということになるんですね」 「ちょっと待ってください結先生。そうするといまの日本にはもう清水市って存在しないんですか」 「ええ。もう存在してないんです。21世紀はじめの平成の大合併では市町村の数がどかっと減りましたか らね。府県制時代でたくさん合併があるのはそれが最後ですからね」 「へえそうなんだ」と直樹。 「それでは久住くん問題です。いま、静岡市と蓮美市のどちらが人口が多いでしょう。  1.静岡市 2.蓮美市 3.ほぼ同じ」 「いきなりクイズっすか。うーん・・・そうだな蓮美市かな」 「ぶっぶー。久住くんのプリンは没収です。静岡市約72万人、蓮美市約71万人ですから」 「なるほど。・・・ところで結先生おれ今プリンなんて持ってないですけど」 「次の時にプリンお願いしますね」 「しかたないっすねえ」  ・・・結局、茉理は二人に中日本新聞を取らせるには至らなかった。 「ところでゆかりん、中日本新聞てどんな新聞なのかな。あたし読んだことなくて」  さらに数日後。町中でばったり遭遇した茉理は柚香と喫茶店で話していた。  中日本新聞の読者でない茉理にちびうめ子ちゃんの新聞連載のことを教えたのはほかならぬ柚香だったのだ。 「まつりん。あれはなかなかいい新聞だよ。日本のまんなかあたりが販売エリアでブロック紙。東海地方では 長年不動のトップシェアなんだよ。名古屋地区だけは帝国新聞も対抗できないっていわれてるから」 「トップシェアってすごいじゃない」 「まあね。基本的には地元密着なローカルと、ワールドワイドな部分とが絶妙のバランスしている新聞 なんだよね。ちなみに全国でシェアが取れてないのは、中日本新聞グループが全国紙じゃないからだろうしね」 「全国紙じゃないんだ」 「うんまあね。全国紙というのは、日本だと帝国、毎夕、毎朝、経産、アメリカだとUSA Tomorrowが そうだよね。北海道から沖縄まで販売してるわけだけど。中日本新聞は本州の真ん中あたり、名古屋圏、北陸圏、 関東圏、蓮美地区あたりしか販売してないから。つまりまあ北海道四国九州沖縄あたりだとそもそも売ってない という根本的な問題があるからね」 「そういえばゆかりん、中日本新聞て本社どこなのかなやっぱし東京かな」 「あのねまつりん、中日本新聞の本社は名古屋だよ」 「名古屋か。だから中の日本なんだね」 「まあね。元々名古屋の二つの新聞社が太平洋戦争中に合併したのが始まりなんだって」 「へえそうなんだ」 「あと、中日本新聞がほかの新聞とおおきくちがうところがあってね。プロ野球の記事が基本的に中日本ドラグーン の記事が中心なんだよ」 「なんでなの」 「中日本新聞の社長が中日本ドラグーンのオーナーだから」 「それって・・・なんというか帝国新聞と東都ジャイアンティスみたいだね」 「まあね。だから両者はばりばりのライバルだよ」 「そうすると実力はどうなのかな」 「中日本ドラグーンは実は日本一になったことが一度しかないんだよね。それも50年以上も前だし」 「ふーんそうなんだ。・・・にしてもゆかりん詳しいね」 「実はほとんどが名古屋にいたころの友人からの受け売りなんだけどね」  やがて、ちびうめ子ちゃんの新聞連載が始まった。  茉理は毎日それを楽しみにするようになった。  そして実をいえば直樹も密かに楽しみにするようになった。  茉理は直樹と違って他の面もきちんと読んでいた。  中日本新聞は実をいえばページ数がかなり多い。というのも広告のページが多いのだ。  記事はというと、地元蓮美についての記事がかなり細かいところまで載っていた。  それどころか、サッカーJFLのFC蓮美の記事までしっかり載っている。  かと思えばワールドワイドな記事もしっかりフォローされている。  さらに加えて、帝国新聞に比べてカラーページが多かった。  それでいて新聞の価格は帝国新聞と同じだったりするのである。 「茉理、ありがと」  秀英社赤リボンマスカットコミックス版「ちびうめ子ちゃん」を直樹はまとめて茉理に返却した。 「どうだった、直樹」 「うん。そうだな、結構おもしろかったかな。特にキャラクターたちが濃いというかなんいうか」 「でしょ。・・・まあこれを機会に直樹ももっと少女マンガに親しむことっ」 「努力してみるよ」 Fin. ------------------------ 2007/7/19-7/19                  あとがき  新聞連載の少女マンガの話です。  というわけで、まつりんが主役です。  「ちびうめ子ちゃん」はもちろんかの有名なマンガがモデルになってるですよ。  中日本新聞は私が日頃読んでいる新聞がモデルになってるですよ。  全国紙じゃないですが、蓮美市は多分本州だろうということで・・・。  今回はゆかりんが活躍です。  実は私のSSでは以外とゆかりんの出番がないのですよ。  冒頭の清水区のくだりについては、細かい数字できちんと計算してるですよ。小説にかくにあ たって数字をぼかしただけですからね。   静岡市は実は今後由比町との合併も計画しているのですが、(07年に合併協議会が・・・)由比町 も場所的に考えて清水区になりそうな予感がいっぱいです。ていうかこの先100年のうちに静 岡市は何回合併をするのやら〜(苦笑)。  FC蓮美という単語がさりげなくありますですけど、一応FC岐阜とかFC琉球みたいな地元 密着型のクラブだとおもってもらうといいかなってことで。  ではでは by BLUESTAR 2007/7/19