[予告] レミー「私はゴーショーグン・チームの紅一点、レミー島田よ。ビッグソウルのせいで    時空漂流しまくる人生を送ってるの。もういやんなっちゃう」 ブンドル「まったくだ。毎回いきあたりばったりだ。実に美しくない」 レミー「そんな私たちが今回とばされたのはなんとびっくり、21世紀の日本なの」 ブンドル「もしかすると元の時代に戻ったのかな」 レミー「あのね、ブンちゃん。ビッグソウルがそこまで親切なわけないじゃん」 ブンドル「それもそうだな」 レミー「私たちがたどりついたのは学園だったの、しかもそこにはなぜか時空転移装置 なるものが」 ブンドル「どうして21世紀にそんなものがあるのだ」 レミー「まったくよねえ。でもまあ幕末の原爆よりはましだけど」 ブンドル「どうやら今回もややこしいことになりそうだな」 レミー「そういうこと。というわけで、次回、戦国魔神ゴーショーグン番外編、蓮美台     の異邦人(エトランゼ)でシーユーアゲイン」      月は東に日は西に - Operation Sanctuary - SS/       「蓮美台の異邦人(エトランゼ)」by BLUESTAR  夜中に蓮美台学園に突如として出現した6人の侵入者たちは、仁科先生に連行され て、理事長室にやってきた。 「まずは自己紹介から。私は仁科恭子。この蓮美台学園の養護教諭」 「私は野々原結です。学園の古典の教師です。そちらは」  2人と向かい合うのは6人の男女だった。 「最初に確認させてほしい。ここの場所と年月日を教えてほしい」とブンドル。 「まるでタイムトラベラーみたいですね。日付を聞くなんて」と結先生。 「場所は日本国、蓮美市、蓮美台学園。日付は20××年5月7日よ」 「21世紀はじめの日本か。日本にとって一番いい時代だな」とブンドル。 「幕末とどっちがましなのかしら、ブンちゃん」とレミー。 「もちろん21世紀の日本のほうだ」とブンドル。 「そうなんだ。ふ〜ん。……それじゃ自己紹介するわね。私はレミー島田(しまだ)。 日仏混血のフランス人でパリ出身」  6人のうちで唯一の女性がはっきりとした日本語で答える。 「レミーってなんかお酒みたいな名前よね」と恭子先生。 「大当たり。レミー・マルタンから名付けたんだって」 「あらまあ」と驚く恭子先生であった。 「レオナルド・メディチ・ブンドル、イタリア出身だ」  金髪で女性にみまちがいそうなほどの優男である。 「ブンドルってなんか日本語みたいな名前ですね」と結先生。 「北条真吾(ほうじょう・しんご)、この中で唯一の日本人。ただしドイツ育ちだ」  黒髪のまじめそうな青年が発言する。 「キリー・ギャグレー、アメリカ人。恋人募集中だ。よろしくな」  金髪でいかにも軽そうな雰囲気の青年。 「スグーニ・カットナル。わしもアメリカ人だ」  片方の目に黒いアイパッチをした男が言う。 「すぐにかっとなる、ってなんか日本語みたいに聞こえるわね」と恭子先生。 「ヤッター・ラ・ケルナグール、アフリカ出身だ」  一番背の高いいかにも頑丈そうな男がぽつりという。 「蹴る殴るってなんか日本語みたいに聞こえるのは、きのせいですよね」と結先生。 「きのせいよ、結。オランダのスケベニンゲンだって現地の発音はスケフェなんとか だっていうしね」  レミーたちは自分たちの複雑怪奇な時空漂流について説明した。  かつて、レミー、真吾、キリーは真田ケン太という少年の護衛をしていた。グッドサ ンダーという移動基地に乗っていたのだ。3年間の間ケン太を守るために3人は巨大変 形合体ロボットであるゴーシヨーグンに乗り込み敵と戦っていたのだ。  敵は、グッドサンダーにあるビムラーという超エネルギーをねらっている。世界を裏 から支配する巨大な悪の組織ドクーガ。そのドクーガの最高幹部こそがブンドル、カッ トナル、ケルナグールだった。  3年後。ケン太は人間から進化して別の生命体となり、宇宙に羽ばたいていった。  それから1年後、地球に戻ってきたケン太はグッドサンダーで仲間たちと共に7万光 年の旅に出ることにしたのだが、その旅に協力してほしいと6人を誘ったのだ。  地球に居場所がないとかんじていた6人はその話にのり7万光年宇宙の旅に出た。  7万光年離れた宇宙で、ゴーショーグンに6人は乗り込んで戦いそして勝利したのだ が、それは宇宙の巨大な意志であるビッグソウルの怒りにふれたらしい。  それ以来彼ら6人は果てしない時空漂流をするはめになったのだ。  ある時は巨大コンピューターが人間を洗脳して支配する惑星に、ある時は密林の惑星 に、ある時は氷の惑星に、ある時は幕末の日本に、ある時はルネッサンスのイタリアに ……彼らはいつしかゴーショーグン・チームと自称するようになり、そして彼らの旅は 果てしなく続いていた。 「……というわけで、私たちは今ここにいるというわけ」とレミーが話をまとめた。 「なんというか、こっとうむけいな話ですねえ」と結先生。 「巨大ロボットに宇宙の意志にビムラーねえ」と恭子先生。 「でも……うそはついてないです。うそ発見装置が反応しませんし」  結は手元にあるノートパソコンをみながらいった。 「あなたたちは、もともといつの時代の人間なのかしら」と恭子先生。 「21世紀なの。でも今よりはちょっと後になるわ」 「ということは一応未来人なんですね」と結先生。 「そういうことになるわね」 「レミー。今までのパターンからすると別の世界の過去だと考えたほうがいい」 「それもそうね、ブンちゃん」 「そういえば幕末の日本にいったということは新撰組と出会ったりとかしたんですか」 と結先生。 「ブンちゃん、新撰組の連中と一緒に活躍してたわよね」 「あの連中はまっすぐすぎるな。私もつきあうにはいろいろと苦労したものだ」 「何いってんのよ。私や真吾より日本に詳しいくせに」 「だからこそだ。新撰組の末路を知っていたからこそ苦悩したものだ」 「そっか。大変よねえ」 「結、どう思う」と恭子先生。 「この人たち信用してもいいと思いますよ。それに私たちの話はこの人たちの話に比べ れば、ささやかなものです」 「それもそっか。それじゃあ結、オペレーション・サンクチュアリの事、話しちゃって いいかな」と恭子先生。 「話してしまいましょう。初対面の私たちにあれだけ打ち明けてくれたんです。こち らもちゃんと話さないといけません」  そして、結先生と恭子先生はかわるがわる、オペレーション・サンクチュアリのこと とこの学園のことについて話したのである。 「時空転移装置に、マルバスときましたか。大変ねえ」とぼやくレミー。 「うむそうだな。今の話を聞いて、なぜ我々がここにとばされたのかわかったような気 がする」 「どういうことかしら、ブンちゃん」 「本来この時代に存在しない時空転移装置をどうにかする必要がありそうだ」 「幕末の原爆、ルネッサンスの未来画家、そして今度は時空転移装置ってわけね」 「そうだ。ただ時空転移装置は未来人にとって生命線だ。今こわすのはまずい。私とし ても人類を滅ぼすのは嫌だからな」 「そうね」 「我々が協力して、オペレーション・サンクチュアリを完了させれば済むことだ」 「それはそうだけど。でも、マルバスのワクチンてそう簡単にはできそうにないみた いよ」 「そのあたりはカットナルに期待するしかあるまい」 「あのなあ、ブンドル。わしはウイルスはさっぱりだぞ。仁科先生や、未来のアメリ カの免疫センターは必死になってワクチンをつくろうとしたんじゃろ」 「あのあたりは空気感染する甲種マルバスにすぐやられちゃたから、そんな時間は多 分なかったわね」 「というわけでみんなどうかな」  他にいくあても予定もないゴーショーグン・チームの一行はブンドルの提案にあっ さり賛成した。  そして彼ら6人はオペレーション・サンクチュアリに協力することになった。  もちろん蓮美市にいる間の生活については、学園が保障することになった。  学園から少し離れたところにあるアパートに6人はすむことになった。  レミーは英語教師。若くて元気な女の先生ということでレミーは一躍人気者になった のである。日本語・英語・フランス語を自在に操るさまは多くの学生たちのあこがれ となった。実のところレミーはかつて諜報組織にいたので地球上の言語はほとんど話せ るのだが。レミーの口癖である「シーユーアゲイン」がすぐに学園の流行語になったこ とは言うまでもない。そんなレミーはこの時代で地上車を購入した。  目立たない車がいい、というブンドルのアドバイスもあり一番台数が多い、カローラ である。  ここのところ車のない世界ばかりだったので、たまには運転しないと腕がなまる、と いうわけである。なにしろレミーは地球でもクーアノアでもA級ライセンスだ。  ブンドルは美術教師。元の時代では美術品に造詣が深かったし、元々ブンドルは歴史 にも詳しかった。日本での生活にもすぐになじんだようにみえたが、それもそのはず、 実はブンドルは宇宙に出る前は(岐阜県の)飛騨(地方)の山奥にこもっていたことがあ る。日本人でないのに日本文化に詳しい、それがブンドルなのである。  本や酒を大量に買い込むブンドルである。  真吾は現代国語の教師。元々純粋な日本人であるから日本の生活にもなじむのに苦労 はしなかった、わけではない。なにしろドイツ育ちなので生活習慣が実はかなり違う のである。そしてまじめな真吾には密かにファンがつくことになる。  カットナルは社会教師。政治・軍事に異様にこだわるカットナルの授業は注目される ことになる。元々頭のいいカットナルである。教科書の内容はさっさと覚えてしまう。  キリーとケルナグールは用務員。キリーは女子学生に手を出しかねないということで 用務員に。ケルナグールは本人の希望で用務員となった。元々しゃべるのが苦手なケル ナグールには確かに教師は向いていないだろう。  もちろん6人は放課後になると、オペレーション・サンクチュアリに協力して、恭子 先生や結先生の手伝いをする。  そして時は流れる…… 「あんたたちの部活動っていつもこんな調子なの」とレミー。 「ええまあ」と直樹が答える。 「私の仲間たちもいつも軽口ばかりたたいてるけどさ、あんたたちも同レベルねえ」 「ええっそうなんですか」と美琴。 「こんにちは、ブンドル先生」と保奈美が図書室で声をかける。 「こんにちは、藤枝さん」 「ブンドル先生って、イタリア人なのに日本のことに詳しいんですね」 「なにしろ日本暮らしが長いからな」 「大統領選挙はどうなるのかしら」と理事長室で恭子先生がつぶやく。 「そうじゃのう。今回も微妙な戦いになるかもしれんな」とカットナル。 「微妙な戦いねえ〜」 「まあ、そうじゃな。せいぜい暗殺されんようにきをつけることじゃな」  かつてアメリカ大統領だった父親を暗殺された上にその時の事故が原因で片目を失 ったカットナルである。 「そこの彼女どうかな〜」 「キリーさん、カフェテリアでナンパするのはほどほどにしてください。ほら、今の女 の子びっくりしてにげちゃいましたよ」とウェイトレス姿の茉理。 「はいはい。それじゃそろそろ外にでますかねっと」 「実においしくできている。見事だ」と差し入れをつまむブンドル。 「ブンドル先生、ありがとうございます」と保奈美。 「藤枝さん、あなた学生にしておくの惜しいわね。この腕前だったらシャンゼリゼに店 だしてもやっていけるんじゃないの。味は3つ星クラスかしらね」 「レミー、それは過小評価だ。4つ星クラスだ。この隠し味が絶妙だな」  ……そして。 「オペレーション・サンクチュアリもほぼおしまい。とりあえず人類絶滅は回避できた わね」とレミー。 「そうですね。でもこれから文明復興は大変だと思います。未来の人たちには頑張って ほしいですね」と結先生。 「そうね。人口激減だし、政府もみんな崩壊してるし。大変よねえ」 「結先生も仁科先生も人ごとみたいにいってるわね」 「あのね。レミーさん。私と結はこっちに永住するの。だから復興には関わらない」 「なんだかなあ。未来の人間がのうのうとこっちに永住するってのは」 「問題ありませんよ。元々この時代に済むときにばれないように戸籍とか資金とか ちゃんといろいろ用意してありますからねえ」 「そういうことよ、レミーさん」  ……そして。 「みんな、卒業おめでとう」とレミー。 「ありがとうございます」と直樹。 「あなたたちは卒業。オペレーション・サンクチュアリもも終わり。……私たちもここ から旅立つことにしたわ」 「えっっ。そんな、レミー先生、なんでまた」 「元々私たちは、この時代の人間じゃないもの」 「……そんな、レミー先生たちも実は未来人だったんですか」 「私たちは、別の世界の人間なの。あちこち漂流してきたわ。巨大コンピュータが人間 を洗脳して管理する惑星とか、幕末の蝦夷地で原爆が爆発する世界とか、いろいろね」 「その話、結先生や恭子先生は知っていたんですか」 「一番はじめに話したわ」 「そうですか」 「まあ生きてればそのうちまた出会うこともあるかもしれないわね、生きてさえいれば ね」 「生きてさえいれば、ですか」 「ええ。それじゃ。最後の言葉はいつも通りに……シーユーアゲイン」  レミーは仲間たちと合流して、蓮美台学園を後にした。 -------------------- 2004/10/19-2004/11/5           あとがき  「戦国魔神ゴーショーグン」は元々、テレビアニメでした。テレビシリーズ終了後 に徳間書店アニメージュ文庫から、テレビのダイジェスト版のノヴェライズ(全26話 中12話分をセレクトしたもの)である「戦国魔神ゴーショーグン」、1年後を描いた 「その後の戦国魔神ゴーショーグン」が出ました。  その後、この小説シリーズは延々と続いていきます。  あげくに新作アニメ「時の異邦人(エトランゼ)」までつくられました。  そして、2冊の小説の番外編がありました。幕末とルネッサンスのイタリアを舞台に した物語です。  というわけで、このSSはその番外編のフォーマットとなっています。  元々時空をとばされまくってるレミーたちだから蓮美台学園にきても不思議はない ということでこういう話ができました。  レミーたちはそろいもそろってとんでもない人たちなんだよねえ。  レミーは、元スパイ、元動物保護官、銃はマグナム44、  キリーは、「プロンクスの狼」と呼ばれた男だし、  カットナルは宇宙にでる前はアメリカ大統領で、  ケルナグールは元ボクシングの世界チャンピオンだもの。  真吾は西ドイツじゃないのかとつっこみがあると思うですが、現実世界の情勢にあ わせて修正したということで。  ブンドルの「飛騨(地方)」については、現実世界のほうで「岐阜県飛騨市」というや やこしい地名ができてしまったため、わざとかきました。  ゴーショーグンはテレビアニメのエンディングテーマがすばり「21st Century」とい う歌詞があるくらいなので、これで21世紀じゃなかったらへんだし(笑)  「はにはに」についてはコンシューマ版で「100年後」が「22世紀」とされて います。単純な算数です。「22世紀」−「100年前」=21世紀。  ちなみにレミーたちの時代ではレーザー銃がふつうになってまして、ブンドルたちの 愛用の銃はレーザー銃です。  ただしレミーだけなぜかマグナム44です。あれを片手で平気で撃てる女性はめった にいないでしょうね。  それじゃシーユーアゲイン。 by BLUESTAR(2004/11/5)