月は東に日は西に - Operation Sanctuary - SS/       「ハスミダイ・ハート」by BLUESTAR World 01 「寒いなあ」  久住直樹はそう言うと、起きあがる。今日はどうして保奈美が起こしにこないんだろ うと思いながら。  ベッドの上にある時計は12月を表示している。いつの間に12月になったんだ。 「つつつつ」  頭痛が痛い。でもそれはすぐ収まって。  そういえば、美琴が恋人になってから保奈美は起こしにこなくなったな、と思い出す のであった。 「おっはよ〜、直樹」 「おはよう、美琴」  2年B組の教室に入る。今日もぎりぎりだがとにかくセーフだな、と思う直樹。 「もうすぐ冬休みだよねえ」 「ああそうだな」 「直樹、なんか予定あるの」 「今のところは特にないなあ。まあ正月になったら近くの神社に初詣にいくかな」 「ふむふむ」  そしてチャイムが鳴った。  授業が終わると直樹は美琴と共にカフェテリアへ向かう。  天文部は相変わらずカフェテリアに常駐している。  秋の蓮美祭は成功したものの、今までが今までだけにそれだけでは部室復活とはなら ないらしい。部室復活への道のりは遠い。 「今日は二人っきりだね、直樹」  広瀬部長は用事でいないのだ。 「ああ」 「これじゃまるでデートみたいだね」 「ああ確かにそうかもな」  そんな天文部席に茉理がやってきた。 「いらっしゃいませ。そこのらぶらぶかっぷるさんご注文をどうぞ」 「茉理〜、おまえなあ」 「ご注文がないようでしたら退出願います」 「わかったよ。コーヒー」 「美琴先輩は何にしますか」 「わたしもコーヒー、それと杏仁豆腐」 「はいかしこまりましたっ」  途中でやってきた恭子先生・結先生連合にひやかされたりしつつ二人の話は弾んだ。 とはいっても天文に関係ない話が多かったような気がするが、まあそれはいつものこと なので二人とも気にしていない。 「ただいま〜」 「お帰りなさい、茉理ちゃん」 「こんばんは、美琴先輩」  渋垣家、夜。茉理が家に帰ると美琴が出迎えた。  美琴が作った夕食を囲む3人。至って平和な光景。 「美琴先輩、また料理の腕、あげましたね」 「ふふふっまあね」 「でも、保奈美にはまだまだ及ばないね」 「直樹、ひどいよ〜。保奈美を基準にされたらとても届かないよう」 「ところで、今日は料理をつくるのにじっくり時間をかけたの」 「うんそうだよっ」 「……実は直樹といろいろしてたんでしょ」  さりげなく上目遣いに。 「茉理ちゃん、いろいろってなあに」 「らぶらぶなかっぷるがすることですから、やっぱりあれなこととか」 「茉理。おまえ俺と美琴のことどうおもってやがる」  直樹が口をはさむ。 「とってもお似合いのらぶらぶかっぷる」 「そりゃそうだが」  とまあこんな調子で、にぎやかな夕食である。 「なあ美琴、俺たちっていつから恋人になったんだ」  美琴を蓮華寮へ送る途中で聞いてみる。 「はぁ。また直樹、記憶障害だね。まあいつものことか。それにまるごと記憶喪失じゃ ないだけまだいいよね」 「まあな」 「夏くらいだったかな。わたしが未来のこと話して、それ以来ね」 「……ああそうだったな」  未来。そう。祐介、オペレーション・サンクチュアリ、マルバス…… 「そういう疑念を抱きつつ、することはちゃんとするなんて直樹ってすけべ」 「あのなあ」      World 02 「どうして12月の次が4月なんだろう、よくわからんなあ。しかも1年以上もすぎて いるし。いったい俺はどうなってるんだか」  朝。そうつぶやきながら直樹は起きあがる。  壁にかけてあるカレンダーの今日の日付のところには、「デート10時、蓮華寮」 と書いてある。 「誰とデートなんだろ。やっぱり美琴かな……」 「おはようございます、久住先輩」  初めて見る顔と思ったが、声でちひろと判明した。なぜか髪が伸びている。といって も腰までたれさがっているわけでもない。 「おはよう、ちひろちゃん」 「それじゃさっそくいきましょう。隣の市の植物園がリニューアルオープンしたそうな ので、今日はそこへいきたいんです。いいですか」 「ああいいよ」  植物園にはいろんな植物があった。見慣れないものも多い。  直樹は、植物よりはちひろに注目していた。  ショートだった髪が、いつのまにかセミロングになっている。  どうしてだろう。 「つつつつつ」  直樹は痛みが治まるとやっと思い出す。そうか。未来にいってる間にのびたんだった な。未来……オペレーション・サンクチュアリ、フォステリアナ、そしてマルバス。  そうだったな。どうしてこんな重大なことを忘れたんだ。 「大丈夫ですか。久住先輩」 「ああ。どうにかね。そうだ何か飲みたいな。水でもいいから」 「ちょっと買ってきますからこのベンチで」 「ああ」  午後2時すぎ。植物園の前にある喫茶店で少し遅いランチ。 「この店、緑が多くていいですね」 「そうだな」 「でもこれだけあると世話が大変でしょうね」 「たぶんここのマスターはよっぽど緑が好きなんだよ」 「そうですよね」  そういって二人は山盛りのスパゲティをなんとかしようとするのだった。  この店はどうやらなんでも山盛りにするのが基本らしい。 「今日の久住先輩、最初のうちなんかヘンでしたけど、何かあったんですか」  もう少しで蓮華寮。静かさを破るようにちひろがいった。 「別にないよ」 「私をみて、一瞬とまどっていたようなきがしたんですけど」 「……ちひろちゃんはごまかしきれないな」 「やっぱり。でもどうして」 「記憶がどうもおかしいんだ」 「えっ」 「昨日は12月だったのに今は4月。記憶がぽんと飛んでいるらしい」 「そんなことってあるんでしょうか」 「前に恭子先生が人間の記憶ほどいいかげんなものはないわよっていってたけど、ま さにそうだね」 「そんな状態なのにデートしてくださってありがとうございます」 「そんなにかしこまることじゃないよ。それにちひろちゃんの体もじっくり」 「久住先輩っっっ」  ちひろは真っ赤になっている。  結局、別れる際にちひろは明日は病院にいったほうがいいと思いますといったので あった。      World 03 「やっと起きたわね、直樹」  直樹はなぜか茉理に起こされた。 「おはよう、茉理。ってどうしておまえが起こしてるんだ」 「そりゃ恋人が遅刻しないためじゃない」 「はああ」  何かの間違いだと思いたい直樹である。 「もしかしてまた、記憶障害かな。まあいつものことだしきにせずにいってみよう」 「こらこらっっっ」 「というのは冗談として、とりあえず遅刻しないようにとっとと着替えるっ」 「はいはい」  茉理が部屋を出る。直樹は部屋の時計の日付を確かめる。昨日より前の年の7月。  直樹の主観ではおとついが美琴、昨日がちひろ、今日は茉理ということになる。  いくらなんでもめちゃくちゃだ。しかも時間が進んだり戻ったりしているのか。  わけがわからない。とりあえず、学園に行くか。  昼休み。 「なおくん、何ぼーっとしてるの」 「ああちょっと考え事だよ」 「それはいいけど。とりあえず屋上に行かないと」 「何でだ」 「なおくん、また記憶障害だね。屋上で弁当が待ってるよ」  かくして直樹と保奈美は屋上へと向かう。 「直樹、遅いよお」  とってもいい天気な屋上では茉理が待っていた。 「すまん、茉理」 「それはそれとしてさっさと食べる。はいっ」  茉理が差し出したものは弁当だった。 「ありがとう」 「今日は変なつっこみはなしなのね。直樹らしくないなあ」 「茉理ちゃん、なおくんまたあれみたい」 「やっぱり。今朝もねどうしておまえが起こすんだって言われたから」 「大変だね、茉理ちゃん」 「まあいつものことだから。それに記憶喪失じゃないんだからまだまし」 「それはそうかも。5年前なんてひどかったもの」 「保奈美さんは唯一の目撃者だもんね」 「まあ、あんな体験すれば記憶がとんじゃうのも無理ないかな」 「保奈美。どんな体験なんだ」 「話したくないな。もし話したことがきっかけでまたなおくんが記憶喪失になるのだけ は絶対に、いやだもの」  その後は、話題を変えて、昨日のテレビの話題などで盛り上がる。  とはいっても直樹はうなずいていただけだったが。  放課後。 「なおくん、今日何の日か覚えてる」 「今日は確か……そういえば茉理の誕生日か」 「そうだよ。というわけで、オペレーション・バースデイ実行するからね」 「待て保奈美。それは何だっ」  とつめよる直樹。 「みんなでこっそり準備して茉理ちゃんのバースデイパーティをやること」 「こっそりっておまえなあ」 「さあ久住くん、さっさと行かないと」 「美琴。どうしておまえがそれをいうんだ」 「わたしもオペレーションのメンバーだもん」 「そういうことだ直樹」 「まさか弘司もメンバーか」 「そういうことだ」  直樹、弘司、美琴、保奈美が着いたのは商店街のはずれにある小さな喫茶店だった。  アルフヘイム2という名前だ。 「いらっしゃいませ。本日は貸し切りです〜」 「こんにちはマスター」 「きましたね。それじゃさっそく準備をぱぱぱっとやりますか」  30分もすると準備が終わった。  にぎやかな飾り付け。中央におかれた巨大なテーブル。  そして持ってきた花や植物も配置されている。 「準備完了ね。それじゃあとは茉理ちゃんをつれてこないとね」 「誰がつれてくるんだ」 「橘さんに頼んであるから、さっそく電話するね」  そう言って、白いケータイを取り出した美琴はさっさと電話する。  しばらくして、ちひろに連れられた茉理がやってきた。  びっくりして驚いた茉理を迎えてパーティが始まる。  パーティが終わると、茉理と直樹は店から追い出された。  お姫さまのエスコートはなおくんの仕事だよ、と保奈美がこっそりささやいた。  そして家にたどりつく。 「記憶障害でもあたしの誕生日はちゃんとおぼえていてくれたんだね」 「まあな」 「それにしてもプレゼント忘れていたのは減点だよ」 「すまん」 「なんてね。実は金欠なんでしょ」 「……どうしてわかったんだ」 「一緒にくらしているとなんとなく、ね」 「そうかな」 「まあきょうのところは、直樹で我慢しとくから」 「我慢てどういう意味だ」 「久しぶりにメイクラブ、しない??」 「なあ茉理、俺たちいつからこうなったんだっけか」  ベッドの上で、二人の静かなひととき。 「去年の秋から。うちの両親が中東に転勤してからすぐに」 「そうだったか」 「そうだよ」 「今までに何回くらいしたんだったかなあ」 「さあね〜。直樹、結構すけべだから。かなりしてるようなきがする。こんな調子だと そのうち孕みそうでこわいわね」 「おまえな〜」 「別にそれが嫌とはいってないの。ただできれば子供は結婚してから作りたいなあ、と 思ってるけど。でも直樹ってエロエロだもんね」 「エロエロってそこまでいうかい」 「そんなエロエロな直樹が好きなあたしもだめな女よねえ」           World 04  今日は11月。冬服に身を包んだ直樹は一人で登校する。 「おはようございます、結先生」 「……久住くん、私は先生じゃありませんよ」  蓮美坂。結先生はなぜか学園の制服を着ている。 「ええっ」 「さては久住くん、また記憶障害ですね。もうしょうがないですねえ」 「結先生、その制服よく似合ってますよ」 「ありがとうございます。ところで先生というのはやめてくださいね」 「あ、はい」  2年B組の教室に二人で入る。 「おはよう、なおくん」 「おはよう、保奈美」 「結さん、ご機嫌ななめみたいね。どうしたかな」と美琴。 「それがですね、久住くんが私のことを先生なんて呼ぶんですよ」 「……ぴちぴちの女子高生に向かってそんなこといったんだ。それは直樹が悪いよ」 「ここの結先生、いや結さんは本当に学生なのか、美琴」 「そうだよ。直樹のクラスメートで、クラスの副委員長で、天文部副部長で、直樹の 恋人」 「……そうだったのか」 「何をいまさら、あああ、また記憶障害だね、直樹。しょうがないなあ」 「しょうがないってなあ」 「恭子先生が何度調べてもわからないんじゃねえ」と保奈美。 「恭子は精神医学は専門外ですからねえ」と結。  昼休み。  久住が結が恋人だったことを思い出したのは3時間めだった。  そして保健室で、直樹は結、恭子先生と楽しい昼食。 「久住の記憶障害は大変よねえ、結」と恭子先生。 「まあ、私もかつては記憶障害で迷惑をかけましたから」 「そうよねえ。オペレーションにもかなりの影響が出たし」 「まあすんだことだからいいじゃないですか」 「まあね。それにしても結、思い詰めないでね。あなたの性格だとまた精神が妙なこ とになりかねないから」 「はあい」  保健室のうまいコーヒーを飲み込んだ久住が口をはさむ。 「それにしても、二人は仲がいいですよね」 「まあね。オペレーションのメンバーの中では年齢の近い日とがあんましいなかっ たしねえ」  オペレーション 「装置のスタッフはみんな私よりはるかに年上ばかりでしたし」  3つめのプリンを食べ終えた結が答える。 「そういえば結先生、いや結さんの年齢っていくつなんです」 「久住くん、女性の年齢は聞いちゃいけませんよ」 「そうよ久住」 「一応永遠の21歳ということにしてあります」 「この時代の日本はまだ成人が20歳なんですよねえ。どうしてでしょう」 「ああそれは、単に法律変えるのが面倒だっただけじゃないかしら」 「日本はどういうわけか独自路線がすきなんですよね」 「そうそ」  放課後。  結と一緒に久住がやってきたのは、時計塔にある時空転移装置室だった。  もちろん久住は、オペレーション・サンクチュアリのことを「思い出して」いた。  時空転移装置、マルバス、AI。  ワクチンも無事に完成し、今では、未来への帰還が始まっている。  ちなみに結と恭子先生は、21世紀永住組で、今後も蓮美市に住むそうだ。  結は将来教師になりたいそうだし、恭子先生はウィルス研究はもうこりごりだから 余生は保健室でのんびり過ごすわ、ということらしい。 「コンピュータ、ドアロック」と結。 「ドアロック完了」 「今日は何か実験でもするんですか」 「いいえ。今日は二人っきりでえっちなことをするんです」  にっこりと笑う結。 「えっちなことって……本気ですか」 「いわゆる英語でいうところのメイクラブというやつですね。ふふふ」 「いいんですか」 「何をいまさら。今日が20回目ですよ」  久住の脳裏には確かにいろんな姿の結先生の「記憶」がある。  ……長い時間が過ぎて。 「久住くんは今日もえっちだったです」 「結さんもね」 「先生といえば、私がこの学園に入るに当たって、教師にするか学生にするかで実は 恭子ともめたんですよ」 「そうなんですか」 「ええ。私は教師希望なのに、恭子が結はちっちゃいんだから学生の方が違和感が少 ないとかいって」 「そうですか」 「いまにして思えば、学生でよかったです。もし私が教師だったら教え子の久住くんと の禁断の恋愛について悩んで苦労したでしょうから」 「俺もそう思います」 「もっとも教師だったとしても、やっぱり久住くんと恋愛していたかもしれませんね」 「どっちにしろ同じこと、ですか」 「恋愛というのは理屈や方程式で計算できるものじゃないですから」      World 05  直樹が朝、目覚めるとそこは見知らぬ場所だった。どこだここは。 「おはよう、直樹」  恭子先生が挨拶する。珍しく白衣じゃない。 「あの、ここはどこですか」 「私の家、というか、マンションよ。やっと目覚めたわね。もう昼すぎよ」 「俺、もしかして泊まったんですか」 「そうよ。……もしかして毎度おなじみ記憶障害かしら」 「まあそんなところみたいな」 「しかたないわねえ。じゃまず設定からおさらいね。あなたは久住直樹。蓮美台学園 の3年生。天文部所属。でもって、この私、仁科恭子の恋人」 「3年、なんですか」 「あらあら、そこをつっこむのね。まあ3年といってもあとは来月の卒業式だけ」 「ええっ」 「卒業すれば私たちの仲をやっと公表できるわね」  恭子先生の作った朝食を食べた。食後にはもちろんコーヒー。 「なんか考え込んでるみたいね。一人で考えてないで、よければ私に話してくれない かな」  直樹は、ここ数日、日付がいったりきたりだったり、毎日仲の良い女の子が違うと いうむちゃくちゃな日々について話した。 「天ヶ崎、橘、渋垣、結、そして私。なんというか、無節操ねえ」 「そうですか」 「ええ。それで久住は誰が一番好きなの」 「……」 「くーずみー、ちゃんと答えなさい」 「ひとりにしぼれないです。みんな、それぞれ好きなんですよ」 「どうやら本気でそう思ってるみたいね。この節操なしっ」  恭子先生の口調が柔らかい。 「すいません」 「それにしても結が学生ですって。はまりすぎててこわいわね」 「そうですよね」  いろんな日々について話が弾む。そして。 「そうね。もしかしたら直樹は毎日違う世界をみてるかもね」 「違う世界、ですか」 「パラレルワールドという単語は知ってるわね」  パラレルワールド。平行世界。世界はたくさんあるという考え方。 「はい」 「全部同じ世界だと考えると確かに不自然よ。逆に全部違う世界だとしたらつじつまは 合うわね」 「そんなもんですか」 「そんなもんよ。どうして久住がそういうことになってるのかはわからないけど、世界 はたくさんあるのね。いろいろと」 「ええ」 「できれば、私はマルバスのない世界に一度行ってみたいわ。マルバスさえなければ、 父さんももっと長生きできたはずなのに」 「恭子先生、泣かないでください」 「父さんのことを思い出すと感傷的になっちゃうわね」 「それじゃこれで失礼します」  夜。直樹はようやく家に帰ることにした。 「今日はつきあってくれてありがとうね」 「どういたしまして」 「直樹、みんな好きっていってたけど、私も好きかしら」 「はい」 「やっぱり節操なしね。まあ久住の場合、まじめな時はちゃんとまじめだからね」 「そうですか」 「ええ。それじゃおやすみなさい。もし何かあったらその世界の仁科恭子に相談して みて」 「わかりました」      World 06 「おはよう、委員長」 「おはよう、直樹。ところでその呼び方はさすがにもうやめてくんない」 「すまん。習慣というのはなかなかな。保奈美だって俺のことを未だになおくんて呼ぶ んだぜ」 「やめてくれって藤枝さんにちゃんと言ったの」 「5回くらい、あいつは変えるつもりはなさそうだ」  直樹は周囲を眺める。ここはどこだっけ。 「つつつつ」  頭痛。そして思い出す。ここは、ホテルだ。  学会の終わったあと、二人でホテルにチェックインしたんだっけ。  そう。俺と文緒は夫婦で活躍する考古学者だからな……  直樹と文緒は空港にやってきた。 「やっぱり成田行きの席はどうやっても取れないみたい」 「久しぶりの日本だってのになあ」 「ここから蓮美空港への直行便さえあればねえ」 「それはいわない約束だろ」 「はいはい。それでね、代わりに他の空港行きで我慢しないとね」 「他ってどこだ」 「セントレア行きがあるのよ。あそこなら本州だし」 「セントレアっていうと確か名古屋だっけ」 「名古屋のそば。鉄道で名古屋駅まで30分だったかしらね」 「よしそれだ」  セントレア(中部国際空港)は2005年にできた空港である。  セントレアから特急で28分で名鉄名古屋駅に到着する。この駅のすぐ隣がJR名古 屋駅である。ここから新幹線に乗って蓮美市へと向かうことになる。  セントレア−蓮美便は存在しない。  二人が蓮美駅に到着したのは夜。  蓮美駅から少し歩いたところに古ぼけた民間の3階建てアパートがある。  102号室が二人の家だった。とはいっても二人は考古学者なので発掘や学会などで 家を空けることが多い。部屋の中には本棚に大量の本やディスクがある。 「ただいま」 「ただいま」 「それにしても、家に帰ってくるのはずいぶん久しぶりね」  荷物をおろしつつ文緒がつぶやく。 「ああそうだな」 「もったいないよねえ、家賃とかいろいろ」 「俺もそう思う。委員長の実家が蓮美市ならなあ」 「私の実家が蓮美市だったらそもそも蓮華寮に入らなかったと思うよ」 「それもそうか」  二人は荷物をある程度片づけた。 「ところで直樹、今日はしないの」 「疲れてるんだけどなあ」 「直樹、私のお願いが聞けないのっ」 「……わかったよ」           World 07  目覚めた直樹は周囲を見回してほっとした。  間違いなく、渋垣家の自分の部屋だ。  時計の日付は3月。  カレンダーの今日の日付のところには「卒業式」と書いてあった。 「とりあえずホテルじゃないだけましか」 「卒業おめでとうございます、お兄ちゃんも直樹さんも」  弘司とその横には2年生の女の子がいた。  どうやらこの子は弘司の妹らしいな、と直樹は思う。 「ありがとう」 「……直樹さん、今日はぼけはなしですか」 「ああ」  この子の名前はなんていったっけ、と考える直樹。 「つつつつ」 「直樹さん、大丈夫ですか」 「ああ、なんとか」 「直樹さんもいろいろありましたけど、わたしがついてますからね」  弘司の妹、広瀬柚香は直樹の恋人である。  いきなりキスから始まった二人の恋愛は今も続いていた。 「ああ、そうだね」 「そうですよ」 「ところで柚香、寮を出るかどうかそろそろ決めてくれ」と弘司。 「まだきめてないんだよねえ。どうしようかなあ」  悩む柚香。  直樹は「思い出した」。弘司は卒業して蓮華寮を出て、アパートに引っ越す予定なの である。妹である柚香は兄と一緒に暮らすか、蓮華寮に残るかの選択を迫られていた。 「お兄ちゃんとは一緒にいたいし、でも蓮華寮の生活も楽しいし、決められないよ」 「弘司、おまえはどうなんだ」 「どっちでもいい。まあ本格的な一人暮らしというのも一度してもいいかな」 「いっそコインでも投げて決めるか、柚香」と直樹。 「それもいいかも。確かにいくら考えても決まらないことならそういう決め方もあり かなとは思うけど」  夜。渋垣家では3人で夕食。 「そういうわけで、まつりん、わたし決めました。蓮華寮に残ります」  柚香は、友人の茉理のことをまつりんと呼んでいる。 「ゆかりん、やっと決めたんだね」  茉理は、茉理でゆかりんと呼んでいる。 「ずいぶん悩みましたけどね。蓮華寮にはあと1年しかいられませんから。その点、お 兄ちゃんとはいつでも一緒に暮らせますし」 「確かにそうだね、ゆかりん。それにしてもどうしてうちの夕食をゆかりんが作って るのかなあ」 「そ、それは……あの」 「俺が作るよりはましだろ」 「そりゃまあね。それでらぶらぶ名物かっぷるがうちで何をしていたのかしら」  直樹・柚香のカップルは学園でも有名な名物カップルだった。 「それはえっと、その、ね、まつりん」 「はいはい。そんなに顔を真っ赤にしなくてもいいわよ。えっちなことしてたんでしょ」 「よくわかったね、まつりん」 「まあ、なんとなくね。あたしも彼氏作りたいなあ」 「その、ごめんね、まつりん」 「別にいいわよ。1年半もつきあってて何もしてなかったらそれはそれであれだし」 「そういうもんかな」  柚香を蓮華寮に送った後、直樹は夜道を一人で歩いていく。 「……やっと、やっと追いついたよ」  直樹は声のする方をみた。 「保奈美、どうした」  その女性は手にした小さな機械を直樹に向けた。 「……間違いないわ。こんな具合に時空のひずみを引きずっているなんて」 「おい、保奈美」 「あなたに重大な話があります。今よろしいですか」 「そりゃいいけど」  蓮美駅のそばにある24時間営業の喫茶店に二人は入った。  エカテリーナは、内容を秘密にするためにパーソナルシールドを展開してから話し始 める。 「まず、自己紹介から。私は久住・エカテリーナ・保奈美といいます。エカテリーナと 呼んでください」  二人はコーヒーを注文したあと話が始まる。 「保奈美。妙なこと言ってるな」 「私はあなたの知っている保奈美さんと似ていますけど別人です」 「別人と言われても、そのなんというか」 「私は、WDO(Worlds Dimension Organization : 世界次元機構)のエージェントなん です。WDO本譜での新型装置の暴走によって、時空のひずみが生じてその結果、パラ レルワールドを転々とする人がでてしまいました。今回の次元放浪の被害者の中で、 一番最後まで残っていたのが、久住直樹さん、あなたなんです」  エカテリーナは胸ポケットから取り出したWDOのバッジを見せた。 「私はあなたの担当です。本当はもっと早くお会いしたかったのですが、久住さんの 転移はランダムな要素が多くて、本部のセントラルコンピュータでも予想が困難だった んです」 「いきなりそんなことをいわれて信じろというんですか」 「ええ。未開世界のあなたにはにわかに信じがたいでしょうけど」  説明が行われた。  WDO本部の根室第一研究所で行われた新型ディメンション・トランスポーターの 動作実験は失敗して、暴走した。  研究所は破壊され、室内にいた25人はけがをした。そして、暴走で発生した時空の ひずみは拡散して8人に影響を与えた。  8人はパラレルワールドを放浪する羽目になったのである。  それでも7人は無事ホームワールドに戻すことができたのである。  エカテリーナは直樹を捜索していくつもの世界を渡り歩いて、やっと直樹に追いつい たのだ。 「というわけで、久住さん、元の世界に戻っていただきます」 「それはいつのことですか」 「もちろん、今、これからです。さっそく本部へ転移しますので」 「いきなりすぎるんですけど」 「元の世界に戻りたくないんですか」 「もちろん戻りたいけど。でもその……」 「この世界の蓮美市にはなぜか巨大な時空のひずみがあるようです。今でも久住さんに はかなりひずみがたまっています。致命的な事態が起こるかもしれません」  エカテリーナの顔は真剣だった。 「わかった。それじゃ本部とやらへ行こう」           World 08  WDO本部は、AA-01世界(ワールド)、地球統一連盟日本州北加伊道(ほっかいどう) 札幌市にある。  そこへ転移した二人。  転移したその日から久住直樹に対する事情聴取が行われた。  夜。直樹とエカテリーナは調査局のオフィスを後にした。  二人は近くのレストランで、遅い夕食。  いろいろと話は弾んだ。そして。 「あのね、直樹さん……ううん、なおくん」  ホテルの廊下は静かだった。 「そういう呼び方をされると俺の幼なじみの保奈美みたいだな」 「そうかなあ。まそれはそれとして、なおくんの部屋はこの1234号室だよ」 「了解」 「それからね。なおくん……私を抱いてくれないかな、ベッドの中で」 「エカテリーナさんはいったい何を考えているんですか」  さすがに驚く直樹。 「私の亡くなった旦那ね。あなたにそっくりだったの。私のファミリーネームが久住 なのは結婚した旦那が久住だったからなの」 「旦那の名前は」 「久住・アーサー・直樹。私はいつもなおくん、と呼んでいたわ」 「それってつまり、俺は旦那の代用品ですか」 「そういうことになるかしらね。弱い女のささやかな頼み、聞いてくれるかな」 「本当にいいんですか」 「ええ。馬鹿な女よね、私って」 「本当に本当にいいんですか」 「くどいわよ、なおくん」  二日後。  事情聴取は終わった。  そして、直樹は元の世界に無事帰り着いたのである。           World 00 「なおくん、大丈夫」 「保奈美か。ああ大丈夫だ」  直樹は周囲を見回す。病室みたいなところだな。  壁にはカレンダー。6月。元の世界なら2年生だなと、直樹は思う。 「1ヶ月も行方不明になっていたんだよ。でも無事戻ってきてよかった」 「何だって」 「ゴールデンウィークの途中でいきなり行方不明になったんだよ、覚えてないの」 「覚えてない」  エカテリーナから、何も覚えていないことにしたほうが面倒がなくていいわよ、と いわれていたので、直樹はそうするつもりだった。 「そう。それじゃ最後に覚えているのは何かしら」 「確か5月5日の夜、テレビで変なバラエティーをやってたな」 「今日は6月5日。なおくんの人生から1ヶ月が消えちゃったね」 「たった1ヶ月じゃないか。5年前なんかまるごと全部だったんだ、それよりははるか にましだよ。保奈美のことも茉理のことも学園のこともみんな覚えているんだし」 「……なおくん。わたし、不安だったんだよ。すごくすごく」 「もう不安じゃなくなったろ」 「うん。またいなくなる前に言いたいことがあるの。わたし、なおくんが好き」 「保奈美。俺みたいないいかげんな男でいいのか」 「いいよ。なおくんだから。ところでなおくんはわたしのことは好き」 「嫌いではないな。それに他に彼女がいるわけ……でもないしね」 「それはつまり了承と考えていいのね」 「そうだ」  …そして、保奈美は説明した。昨夜、蓮美台学園のそばで直樹が倒れているのが、通 行人に発見されてそのまま蓮美市民病院に収容されたこと。  学生手帳で直樹の名前がわかったこと。  渋垣家に電話がきて、家にいた茉理と保奈美が病院に向かったこと。  しばらくすると、茉理がやってきた。 「直樹、大丈夫なの」 「大丈夫よ、茉理ちゃん。なおくんは大丈夫。ただし、行方不明の間のこと覚えてない んだって」 「直樹。保奈美さんのことや学園のこととかはちゃんと覚えてるのね」 「ああ」 「行方不明の間に何があったか聞きたかったけど覚えてないんじゃ無理よね」 「まあな」 「直樹が無事ならそれだけで十分だよね。多くを望んじゃいけないよね」 「そうかもね」と保奈美は答える。  その夜。直樹は退院して、渋垣家に帰ってきた。  実のところ、直樹は気絶していただけでけがをしているわけではなかったのでこれ以 上入院する理由はないのである。ベッドに腰かける直樹。 「やっぱり家が一番落ち着くな」 「でも、なおくん、居候じゃなかったかしら」 「それはいわないお約束だろ、保奈美」 「はいはい。ところで、なおくん、本当のところは行方不明のあいだに何があったの」 「……やっぱり保奈美だけはごまかせないか」 「なおくん以上になおくんのことが詳しいわたしには、何かを隠していることは わかったのよね。ただ、何を隠してるのかはさっぱりだけど」 「どうしても聞きたいか」 「なおくんがどうしても嫌ならやめてもいいよ」 「いずれ話す。ただ今はまだ話をきちんとまとめられる自信がないんだ。なにしろ色々 とあったからね」 「わかったよ、なおくん」  退院した翌々日は月曜である。  直樹は「いつものように」保奈美に起こされて登校した。  放課後。学園の理事長室には、直樹、保奈美、茉理、結先生、恭子先生、理事長、深 野先生、ちひろ、文緒、美琴、柚香がいた。  直樹が重大な話があるということで集めたのだ。 「さて久住。いったいどんな話なのかしら」と恭子先生。 「俺が行方不明だったことはご存じですね」 「ええ。無事でよかったわ」 「行方不明の間に何があったか聞きたいですか」 「興味はあるわね」 「では始めます。ああ。そうそう、非常に複雑な話ですから録音しといたほうがいいと 思います」 「ICレコーダーでいいかな」と深野先生。 「ええかまいません」 「なおくん、どうしてここで話をするの」 「オペレーション・サンクチュアリは機密事項ですから無関係な人に聞かせるわけには いきません、そうですね、結先生」 「久住くん、どうしてオペレーションのことを知ってるんですか」 「だからそのあたりも含めて話します。ここなら他の人に聞かれる心配もないですし」  そして、直樹は次元漂流のことについて語り、オペレーション・サンクチュアリにつ いて語り、WDOについて語ったのである。 「……俺の話は以上です。この世界のオペレーション・サンクチュアリに参考になりま すか、恭子先生」 「参考になるところじゃないわ。よく話してくれたわね久住。それにしても、パラレ ルワールドとはね。世界はたくさんあるってことよね」 「そういうことですね」と結先生。 「あの、恭子先生。もしかして祐介はこの学園にいたりするんですか」と美琴。 「ばれちゃしょうがないわね。ただ祐介くんはあなたには知らせるなっていってたから ねえ。どうしたものか」 「久住先輩、話してくださってありがとうございます。やっぱりフォステリアナは役に 立つんですね」 「橘、この世界のフォステリアナが役に立つとは限らないわよ」 「そんなあ」 「昔読んだ架空戦記で、世界が違うと遺伝子が微妙に違うという話もありましたし」  と補足する結先生。 「結先生、そんなこといわないでください」とちひろがいう。 「要するに、けが人をみかけても助けなきゃいいのね。用心用心」と茉理。 「渋垣、それは人としてちょっとまずいんじゃないの」と恭子先生。 「祐介さんが逃げ出さないようにセキュリティちゃんとしてくださいね」 「はいはい」 「それにしても、私が学生というのは、そのどうでしたか」 「そうですね。結先生じゃなくて結さんというのもなかなかつきあっていて楽しいです」 「そうですかあ。世界は広いですねえ」とうなずく結先生であった。 「それにしても、その世界の仁科恭子も考えることは同じね。久住、マルバスのない 世界て本当になかったのかしら」 「そういえば、WDO本部ではマルバスについてはデータがないので調査が必要だって いってたような」 「WDO本部。さぞかしすごい世界なんでしょうね」 「ええまあ」  ……1ヶ月後。マルバスのワクチンは完成した。  オペレーション・サンクチュアリは最終段階に入り、未来への帰還が行われた。  天ヶ崎美琴は、この時代が気に入ったということで、現代永住ということに。  美琴の弟の天ヶ崎祐介は、未来で文明復興の手伝いをしたいということで未来へ帰還 した。その前に直樹と祐介が対面するというイベントがあったが、両方ともつっこみま くったとか。  橘ちひろは、フォステリアナ育成のために、そして妹ちさとが未来にいることから、 最終的に未来へ帰還することになった。  渋垣茉理は、祐介と遭遇することもなく、直樹と恋人になることもなかった。  野々原結は、この時代に永住することになった。教師になるのは彼女の夢であり、 それがかなったのだから。とはいえ、時空転移装置の調整などのために時々未来へ出張 する必要がありそうだという。  仁科恭子も、この時代に永住することに決めた。ワクチンの開発はもうこりごりだも の、わたしには保健室の先生のほうが気楽でいいわ、とかなんとか。  とはいえ、未来では政府・国際機関等も消滅していることもあり、ワクチン接種の ためにしばらくの間は現在と未来を行き来することになりそうである。  秋山文緒は、今回のことで考古学者志望であることが直樹、美琴、結先生などにばれ てしまったので、開き直って、立派な考古学者になってみせるわなどと言っている。  そして、時は流れた……  卒業式、謝恩会、それが終わると保奈美は、直樹を引っ張って歩き出す。 「どこへ行くんだ、保奈美」 「なおくんは黙ってついてきて」  保奈美は珍しくシリアスな顔だ。直樹は黙ることにした。  ついたところは、蓮美市役所蓮美台支所だった。 「保奈美。役所になんの用があるんだ」 「なおくん、これにサインして」  直樹はそれをみた。婚姻届だった。保奈美の名前はすでに記入済み。 「保奈美。確かこれには保証人が二人いるはずだが」 「それならもうサインしてあるわよ」  保証人の欄には保奈美の父親と直樹の叔父のサインが入っている。 「あのな、保奈美。俺もおまえも未成年だから保護者の許可がないと……」 「これが私の両親の承諾書と、なおくんの親権者の渋垣夫妻の承諾書です」  そういって保奈美は封筒を直樹に渡す。直樹は中の書類を開いて確認。 「というわけで、なおくんはさっさとこれにサインすること」 「あのなあ」 「なおくん、わたしと結婚するの嫌なの」 「そんなことないよ」 「それならとっととサインしなさい」 「……わかった」  直樹はサインをした。 「これでわたしたち夫婦だね」  支所を出る。 「そうだな。でもなにもこんなに急がなくても」 「エカテリーナさんからいろいろ話を聞いてるの。人の命ってあっけないものだから、 だから思い立ったらすぐに実行しないといけないって」  エカテリーナと保奈美は今や友人だった。そっくりなので双子みたいに見える。 「そうか」 「だからわたしは卒業してすぐに結婚することにしたの。強引かな、わたし」 「十分、強引だ」 「なおくんのプロポーズを待とうかと思ったけど、なおくんのことだからプロポーズに 何年かかるかわかんないし」 「……確かにそうかもな」 「次はなおくん、子供作りたいな。エカテリーナさん、旦那さんと子供作れなかった こと後悔してるんだって」 「保奈美。エカテリーナさんから悪影響受けてないか」 「かもね。でも、わたしはエカテリーナさんの二の舞は嫌だから」 「それもそうだな」  もうすぐ春。二人の前には「未来」が広がっていた。                                ------------------ 2004/7/24-2004/8/3           あとがき  「ハスミダイ・ハート」は、以前にかいたSS「パラレル・ハート」のセルフパロ ディです。  今回はなるべく原作寄りの世界的なかんじでかいてあります。  パラレル・ワールドにはいろんな可能性があるわけで、そこでは結先生がクラスメ ートだったりすることもあるのです(苦笑)  転移する直樹がどうして記憶を持ってるのかというと、えっとその世界の直樹と 記憶が融合しているということで。ジェイムズ・P・ホーガンの「量子宇宙干渉機」 みたいな〜。  直樹の部屋にある時計は、このSSの都合上、年月日表示する目覚まし時計という ことになっています。そこらの店ではまず売ってないんですが、私の持ってる時計の ひとつがそういうのです。GENTOSのET-914。  上段に時間(20:23)、下段に日付(8/5/'04)。  さて、ヒロインたち。  6人はもちろんWin版ですが、文緒と柚香(ゆか)はDC版追加ヒロインということ で内容的には両方混ざった形になっています。  基本的な展開は実は「パラレル・ハート」と一緒なんですね(自爆)。  WDOは、私のオリジナル小説に出てくる組織です。  「パラレル・ハート」「さゆりなパラレル」に出てきます。  「パラレル・ハート」のメインヒロインが幼なじみだったので、じゃはにはにでの 幼なじみとくれば……ということでほなみんがメインのお話となりました。  えっ、茉理だって幼なじみだって。それは確かにそうなんだけど……(^^;;)  エカテリーナさんみたいにならないように積極的に動く保奈美。  そんな二人の人生は、まあお察しの通り、直樹は保奈美にぐいぐいひきずられる 人生になりそうです(笑)  まあそんな人生もありよね、ということで。 by BLUESTAR(2004/8/5)