月は東に日は西に - Operation Sanctuary - SS/       「過去からきた女学生」by BLUESTAR  大日本帝国、蓮美市、蓮美台、昭和12年10月。 「ここは景色がよいな」と彼女は独り言をつぶやいた。  紺色の袴姿、肩までの黒髪。まだ若き乙女のようにみえる。  蓮美駅のはるか北にある小高い丘、それは蓮美台と呼ばれている。彼女は木や草が茂 る蓮美台に時々やってきて、蓮美市を眺めるのが好きだった。  帝都と違いこの蓮美市にはまだ高い建物が少ない。だから蓮美台から蓮美市の市街地 と蓮美海岸を一望できた。  彼女はしばらくの間ぼーっとしていた。  そしてふいに光に包まれた……                ★ 「ここはどこだ」  彼女が目覚めるとそこは、みたことのない場所だった。  彼女は体を起こした。視界に入ったのは、なにやら巨大な機械らしきもの。 「やっと目が覚めたのね。ここは、学校よ」  目の前にいる白衣の女性が答えた。 「どこの、なんという学校だ」 「蓮美市の蓮美台学園」 「蓮美台に学校があるとは初耳だな」 「それは無理もないわ。まだ歴史の浅い学園だから」 「あなたは医者ですか」 「学園の養護教諭よ。たいしたことはできないわ」 「ところで、私はどのくらい意識を失っていたのかな」 「6時間くらいよ」 「そうかそんなに。……家の者が心配しておるだろうな。電話を貸してほしい、無事を 伝えたいのじゃ」  そこへ、部屋のドアがあいてちいさな女の子と青年が袋を持って入ってきた。 「その前にひとつ、確認させてちょうだい。今はいつかしら」 「昭和12年、西暦1937年。それがどうかしたのか」 「残念だけどそれは違うの。今は西暦20××年。21世紀なの」 「信じられぬ。本当なのか」 「本当よ。驚いたかしら」 「実に驚いた。しかし、私はタイムマシンを使った覚えはないぞ」 「申し訳ありません。この部屋にある装置が暴走してその結果あなたはこの時代にきて しまったのです」  小さな女の子が土下座してそういったのである。 「もしかしてこれはタイムマシンか。ウェルズの小説に出てくるものとはずいぶん違う ようだが」 「この装置は、ウェルズのタイムマシンほど高性能ではありません。22世紀と21 世紀をつなぐのがやっとの中途半端な代物で、時空転移装置といいます」 「たとえ中途半端でも時を超える機械とはな。すごいものだ」 「おれもすごいものだと思うよ」と青年が答えた。  それから、自己紹介が行われた。  昭和12年からの女性は、名前を松井田泉(まついだ・いずみ)といい、蓮美高等女学 校に通う学生であるとのこと。  白衣の女性は仁科恭子と名乗った。  そして小さな女の子は、野々原結といい、蓮美台学園の古典教師で、時空転移装置の 管理者だというのだ。  青年は、久住直樹。野々原先生の担任するクラスの教え子である。  結先生は、時空転移装置の改造が終わり次第、泉を昭和12年に帰還させることを約 束した。ただそれまでの2週間の間、この時代で暮らさなくてはならないことを説明し たのである。 「やむを得ないな。しかし、どうやって暮らせばよいのかな」 「費用も住む場所も学園で手配するわ。とりあえず、もう夜になってるから今晩の宿 だけは決めないといけないわね」 「とはいっても、蓮華寮はいまいっぱいですからだめですし、久住くんは本人が居候で すから論外ですしねえ」と結先生。 「それでは恭子先生の家でどうですか」 「くーずみー、あんたねえ」 「そうですね。恭子は一人暮らしですから問題ないですし」 「ゆーいー。あんたねえ」 「それじゃ決まりですね。仁科恭子先生、よろしくお願いします」 「しょうがないわねえ。……というわけでうちにとまってもらうから」 「わざわざ家にとめていただくとは、よろしいのですか」 「考えてみれば、あなたにとってここは見知らぬ未来。わからないこともいろいろと あるかもしれないし、ひとりぼっちよりはいいでしょ」 「それもそうであるな」  そのあと、4人は学園のカフェテリアで食事をした。 「なかなかおいしうございました」 「そういってもらえるとほっとするわね」と恭子先生。 「ところで、ここの支払いだが、自分の分は払いたいのだが」 「くーずみー、泉さんのぶんていくらになるかしら」 「1500円です」 「…すごい金額だな。そんな金額はもっておらぬぞ」  泉はそういって顔をしかめた。 「(小声で)今と昔では貨幣価値がものすごく違うのです。それに昭和21年以前の貨幣 は確か今ではすべて通用しなかったはずですよ」 「(小声で)つまり、私のもっているお金はここではまったく通用しないのだな。悲しい ことだ」 「そこの二人はこそこそ会話するのはやめなさいってば。今日の支払いは結だからね」 「ええっそんなあああ」  そして、それからほどなく4人は立ち上がるとレジへ向かった。  レジを担当したのは茉理だった。 「…はい、ありがとうございました。ところで直樹、もう帰るんでしょ」 「ああ」 「それじゃちょっと待ってて。もう閉店だし、一緒に帰りましょ」 「わかった。……そういうわけですので、ここでお別れです、泉さん」 「ひとつ伺ってよろしいかな。お二人はどういう関係なのだ。もしや恋人かな」 「そんなんじゃないです。おれは居候で、茉理の家に住んでいるんです。だから家族 みたいなものですよ。ついでにいうと茉理はおれのいとこになります」 「家族みたいなもの、か。なるほどそれにしてはずいぶん仲がよさそうにみえたが」 「それはきのせいだと思います。これはバカですから」 「これこれ、いとこに向かってばかなどというべきではないぞ」 「……そうかなあ。直樹ってほんとにバカだから」 「久住どの、ここまで言わせてもいいのか」 「かまわないよ。おれがバカってのはある意味事実だからね」 「久住どのはやさしいのだな。私の知っている殿方には女性に対して優しくないものば かりでな」 「…そろそろ閉店よ。泉さん、行きましょう」 「うむ。それでは」  恭子先生の住むマンションに二人はたどりついた。 「これがマンションとはな。アパートメントの間違いであろう」 「ええそうね。ただこの時代の日本ではこういう集合住宅のことをマンションとよんで いたのよね。なんでかしら」  そして二人は恭子先生の部屋に入った。 「これが21世紀の住まいというわけか」 「そういうこと」  泉は部屋を見回した。 「この暦にある、平成(へいなり)とはなんのことじゃ」 「平成(へいせい)は昭和の次の年号よ」 「……陛下はお亡くなりになられたのか。いつ亡くなられたのだ」 「昭和は64年まで続いたわ。つまりあなたの時代から52年もね」 「ずいぶん長生きされたのだな」 「そうね」 「ここにある巨大なものはなんじゃ」 「それはテレビ」 「もしや、テレビジョンのことか」 「ええそうよ」 「そうか。テレビジョンは実用化されているのじゃな」 「ええ。今では世界中でテレビジョンが放送されているわ」 「使ってもかまわぬか」 「ええどうぞ。この赤いボタンが電源。数字がチャンネル」  そういって恭子先生はテレビのリモコンを泉に渡した。 「チャンネルは12もあるのか」 「そんなにないわ。ちなみに4チャンネルがNHKで、それ以外は民間のテレビ局だ から」 「民間の放送局があるのか」 「ええ」 「昭和12年の帝国には放送局はNHKしかなかったぞ」  そして泉はリモコンのボタンを押した。 「それでは次のニュース。蓮美市議の山川一郎議員が、本日蓮美市営南病院で記者会 見を行いました。健康上の理由から今日づけで辞職とのことで…」  チャンネルが変わった。 「つまり、君は僕のことなんかどうでもいいんだね」 「そんなことないわよ。もう。こっちむいてくれる」  テレビの中で若い女は男にキスをしていた。  チャンネルが変わった。 「…我々取材班は、サハリンにやってきました。ソヴィエト連邦がロシア連邦に変わ ってもサハリンの暮らしぶりは」  チャンネルが変わった。 「アウトです。ナゴヤドーム、試合は延長戦に入ります。それではここでCM」  チャンネルが変わった。 「怪盗ニット。そこまでだ」 「なかなかいい推理をしてるね。アランくん。でもこの天才怪盗ニットはそう簡単には つかまらないんだよ。ルピン3世だって、キャッツ・ハイだって、セイント・ポニーテ ールだって簡単にはつかまらなかったろ」 「そうか、怪盗ニットはやっぱりアニメおたくだったんだね」 「いまごろきづいたのかい。まだまだだね。ではさらぱだっ」  テレビが消えた。 「ひとつ質問してよいか」 「ええどうぞ」 「未来のテレビではキスくらいはあたりまえなのか」 「ええ。それどころかベッドシーンも結構あるわよ」 「……道徳が低下していないか」 「きのせいでしょう」 「次に、ソヴィエトがロシアに変わったといったな。ソ連になにがあったのだ」 「1990年代に、経済的に行き詰まったソヴィエト連邦は崩壊したの。今ではロシア 連邦、ウクライナとか15の国になってるわよ」 「共産主義はどうなったのだ」 「かなりの国が共産主義から資本主義よりに転換したわよ」 「…ふと思ったが、今の日本はどっちだ」 「資本主義よ。天皇制も存続してるわ」 「次に、あのナゴヤドームとやらだが、室内で野球をしているようにみえたが」 「ドーム球場といって、屋根のついた野球場よ。日本とアメリカにはそういうドームが たくさんあるわよ」 「ほほう。ところで闘っていたのはどこの球団だ」 「巨人と中日よ」 「巨人は未来でも健在というわけか」 「そうね」 「最後のあれはもしかして漫画映画か」 「まあそんなとこね。今の時代ではアニメっていうんだけど」 「私がみたのはなんという作品なのかな」 「名探偵アラン。雑誌連載の人気漫画を原作にアニメにしたものよ」 「あんな小さな子供が名探偵なのか。すごいな」 「実はアランは本当は大学生なんだけど、特殊な薬を悪の組織に飲まされて体がちびに なってるのよ」 「そんな薬があるとは、未来とはすごいものだな」 「ないってばそんな薬。あれはあくまでも架空のお話だから」  翌日。  恭子先生は学園に電話をすると、泉と共に出かけた。  マンション近くのコンピニエンスストアで、オペレーション・サンクチュアリ特別会 計用の口座から20万円を引き出した。  泉は24時間営業の店に驚き、機械から現金が出てきたのをみてさらに驚いた。  そして1万円札に福沢諭吉がかかれているのをみてやはり驚いた。  それから近くのハンバーガーショップで朝食。  なぜオーストラリア産の牛肉なのだと恭子先生に質問したりもした。  それから駅のそばにあるレンタカー店で恭子は車を借りた。トヨタのコンパクトカー である。 「トヨタというのは日本の会社なのか」 「ええそうよ。愛知県豊田市に本社をおく世界的な自動車メーカーよ」  トヨタが本社を愛知県挙母町に置いたのはまさに昭和12年である。その後、挙母町 は市に昇格し、やがてトヨタ自動車に合わせて「豊田市」に改名した。21世紀初頭の 合併後の豊田市の人口は約40万、愛知県で2番目の大都市である。 「日本の自動車が世界的とは…時代の違いを痛感するな」  レンタカーはやがてデパートに入った。 「ほほう蓮美駅のそばにこんな立派なデパートがあるとはな」 「郊外のショッピングモールのほうがもっといいんだけどね」  そして泉の服や、食べ物、飲み物などをどんどん買ってゆく。  荷物をいったん車に置くために二人は駐車場に向かった。 「なんというか、物が豊富にあるのだな」 「そうね。20世紀後半から日本は豊かになって、物があふれる社会になったわ」 「昭和12年とはえらい違いだ」  そして二人は次に本屋に向かった。泉がこの時代までの歴史が知りたいといっていた ので。  二人は10冊ほどの本や地図帳を買い込んだ。 「1万8550円になります」  レジの言葉に恭子先生は、2万円を出した。 「2万円お預かりします。1450円のお返しです。ありがとうございました」  レシートと、本の詰まった紙袋を受け取る。そして二人は歩き出す。 「私にとっては1万円というのは雲の上の単位だが、ここでは違うのだな」 「ええそうね。私にとっては雲の上っていうと1千万とか1億とかそのあたりかな」 「そうなると、国家予算だとどういう単位になるのだ」 「今年の政府予算が90兆円くらいだったかしら」 「……単位がでかすぎて把握できんな」  それから二人はレンタカーで、海に向かう。泉が海がみてみたいと言ったからだ。 「海の青さは変わらぬな。地上はずいぶんかわったが」と泉がつぶやく。 「そうね」  それからしばらく二人は時々ぽつぽつ話しながら海をみつめていた。  マンションに戻ると、泉はペットボトルの緑茶を飲みながら、本を広げた。 「……だいたいの歴史がつかめたと思う。帝国は英米に負けて、民主国家になり、そ の後、国民は平和に暮らしている。昭和12年と比べればここは天国だな。陸海軍も なく、特高もなく、華族もなし。街を見た限りではこの日本はかなりアメリカナイズさ れているようだな」 「そうね。今の日本はアメリカの強い影響下にあるわ。日本を占領したのがアメリカ だったのは幸いだったといえるでしょうね。少なくとも、旧東西ドイツみたいに分断国 家にならなくて本当によかったといえるわね」 「恭子先生は22世紀人だが、22世紀でもアメリカの影響下なのかなこの国は」 「22世紀だと、中国、あなたの時代でいう八路軍の国の影響も強いわよ」 「今の日本は、昭和12年に比べると、人口は少し増えているが、国土は大きく減って いる。とはいえ、昭和12年よりこの時代のほうが自由で豊かで暮らしやすそうだ」  昭和12年の帝国の人口は約1億である。ただし、21世紀の日本よりも領土が広大 なので単純に比較しても意味がないのだが。 「それはそうでしょうね。でもこの時代にも問題がないわけじゃないのよ」 「そのようだな。原子兵器による世界滅亡の危機、続発する地域紛争、地球温暖化に よる海面上昇、まあ確かに問題は複雑だな」 「でもまあ、そういうのは努力次第でなんとかなるのよね。マルバスだけはどうにも ならなかったから」  すでに泉は恭子先生からオペレーション・サンクチュアリのことを聞いていた。 「でもマルバスのワクチンはぎりぎり間に合った。だから人類滅亡は回避できた」 「人類の90パーセントも死ぬ前に開発されていればよかったんだけどね」 「それはしかたあるまい。マルバスが強すぎただけのことだ」  夜。マンションに結先生と直樹と美琴と保奈美が現れた。 「こちらが22世紀人の天ヶ崎美琴、こちらが21世紀人の藤枝保奈美。二人とも結の 担任するクラスの学生よ」 「初めまして。松井田泉といいます。私のことは伺っておりますか」 「昭和12年からだってね。見知らぬ時代だから戸惑っていて、そして寂しいでしょ」 「……戸惑っているのは確かだ」 「大丈夫。ここのひとたちは本当にいい人たちばかりだから。それからよかったらわ たしと友達になれないかな」 「よいのか。私は直に元の時代に戻る予定だが」 「かまわないよ。それじゃよろしくね。わたしのことは美琴って呼んでくれていいか らさ」 「うむ、わかった」 「美琴だけずるいよ。松井田さん、私も友達になってもらいたいな」 「よいのか」 「うん。それじゃいいかな」 「よかろう」  それから夜遅くまでにぎやかに話がはずんだ。  翌々日。泉は短期留学という名目で蓮美台学園の2年B組に転入した。  英語の時間は先生がほめたたえるほどすばらしい発音で読み上げた。  体育の時間ではトップのタイムをたたき出した。  凛とした雰囲気とてきぱきとした行動。  クラスの注目を集めたのである。  放課後は、久住どのの部活がみたいといって、天文部の見学をすることになった。  その後も泉は直樹と一緒にいることが多かったようである。  そして、2週間が過ぎた。  時空転移装置の改造もほぼ完了。  最後の夜。直樹の携帯電話に泉から電話があった。  これから会いたいので公園まできてほしいというのだ。 「久住どのはいつでも優しいな。私はそんなところが好きだ、好きなのだ」  公園では泉が待っていた。 「えっ」 「愛の告白というのは難しいものだ。迷っているうちに最後の日になってしまった」 「泉さん」 「もっと時間があればと思ったが。よく考えれば、本来は私達はタイムスリップさえ しなければ出会うはずもなかったのだ」 「確かにそうだけど」 「久住どのに好きなおなごはおるのか。藤枝どのや渋垣どのとは仲がよさそうに見えた のだが」 「確かに仲はいいが、恋人未満というところかな」 「……そうか」  それから静かな夜の公園で二人はしばらくたたずんでいた。 「知っての通り私は明日戻ることになる。久住どのに抱いてもらいたい。だめかな」 「その、おれなんかでいいのか」 「好きな男に抱いてもらいたいだけだ。……もちろん出会って2週間では早すぎると 言いたいのだろうが、私にはもう時間がないのだ」 「念のために確認しますけど、その……抱いてキスして、そのあたりまでですか」 「ハッキリいうぞ、久住どの。私はその先まで、ああつまり最後までしてほしいとい ってるんだが」 「泉さん、その、本気ですか」 「もちろんだ。……こんな恥ずかしいことが冗談で言えるかっ」  直樹が近づいてみると泉の顔は真っ赤に染まっていた。  そして直樹は泉を抱きしめた……  翌日、時空転移装置室。 「それではお別れだ、みなさんありがとう」と泉がお辞儀をする。。 「こちらこそ、すいませんでした」と結先生。 「直樹どの、本当にありがとう、そなたには本当に世話になった」 「どういたしまして。お元気で」と直樹。 「……泉さん、もしかして久住となにかあったのかしら」 「ノーコメントじゃ」 「くーずみー、あとで説明してちょうだいね」 「恭子先生。そんな怖い目をしないでくださいよ」 「泉さん、目的時を正確にお願いします」と結先生。 「西暦1937年、10月25日、午後4時10分じゃ」 「入力完了。転移開始」  結はボタンを押した。                ★ 「なぜここにいるんでしょう。今日は定期試験の日でもないのに」 「ゆーいー、あんたは働き過ぎ。もっと休まないとドクターストップするわよ」 「恭子っ」  結は目の前にある時空転移装置を調べた。  動作ログを確認した。最後に使用したのは”2週間前”。  パネルやメーターを確認する。調子は問題ないようだ。 「それじゃ少し休みましょうか」 「それなら結、カフェテリアでプリンね。このプリン中毒者」 「私は中毒じゃありませんっ」  時空転移装置室は無人になった。  結先生、恭子先生、直樹は理事長室を通り抜けた。  直樹の脳裏に女の子の顔が浮かんだ。夕べみた妙にリアルな夢に出てきた女の子で あり、名前は松井田泉だったようなきがする。直樹は首を振って残像を追い払う。  自分は欲求不満なのかな。女の子とあんなことをする夢を見るなんて。こりゃ本当に 恋人を作らないとな。そう思う直樹であった。  理事長室の壁にはメルカトル図法の日本地図が貼られていた。  大日本帝国の領土は赤く塗られている。  ”南樺太”、北海道、本州、四国、九州、”韓半島”、”台湾”、”南洋諸島”。                             --------------------- 2004/12/16-2004/12/20           あとがき  過去からのタイムスリップ、それが今回のテーマです。  現代社会に驚く泉の未来の日々はいかがでしたか。  貨幣については、昭和12年では100円札が一番高額紙幣だったみたいですね。  だから1万円札というのは驚くでしょうね。  「名探偵アラン」はもちろんあのあにめがもでねになっています。  この作品では主人公の偽名、森アランは「森鴎外」と「エドガー・アラン・ポー」 から取ってあるということで(笑)  トヨタが本社を愛知県挙母町においたのは昭和12年です。  挙母町はその後豊田市という名前になります。  泉のまわりにはやさしい男がろくにいなかったためか、直樹に一発で恋してしまった というそういう展開ですね。  というわけで泉を過去に送りかえした結果、歴史が改変されてしまいました。  なんだかなあ〜。 by BLUESTAR(2004/12/18)