「紹介しよう。こちらがエリナ・ル・アートブルクだ。そしてメリー・アニー・ロ
ーゼ・ライク・ミル・プラスコット。地球出張所の副所長ということになる」

 私はエリナ・ル・アートブルク。日本では早川えりなという名前を使っている。
 異星人のパパと日本人のママの間に生まれて日本の東京都友角市で育った。
 ママは幼い頃に亡くなり、パパも1地球年前に事故死したのでそれからはずっと
一人暮らし。地球の暦でいうと1981年7月11日生まれの17歳。
 日頃は高校生として、友角市の私立桜台学園高等部に通っている。
 もっとも地球の高校生で宇宙船を持ってるのは多分私くらいかしら。
 そしてバイトとして、銀河系ナンバー2の貿易会社、キャメロード・トレーディ
ング、フロンティア99支店地球出張所所長として働いている。


          辺境駐在 Written by BLUESTAR
          Report.2 ロサンジェルス・ホリデイ


「ディズニーランドは楽しかったかしら、真希」
「もちろんよ、えりな。やっぱり東京とは一味違うわね」
「そりゃそうよ。ここをどこだと思ってんの」
「カリフォルニアだものね」
「そういうこと」
 カリフォルニアの夏は暑い。今日もとってもいい天気で100度越えたんじゃないか
しらね。(摂氏だと40度・・・だったかな)
 学校は夏休み。私はメリーと友人でクラスメートの松川真希(まつかわ まき)と一緒
にディズニーランドに来ていた。もちろん仕事じゃなくて遊びにきたのよ。
 真希は去年もクラスメートでそれで出会った。私の本当の正体を知っている数少ない
友人のひとり。もちろん私の正体については秘密を守ってくれてるし、学校を休みがち
な私のフォローもしてくれるの。
「えりな、LA(エルエー)には詳しいみたいね」
「ふふふ。そりやそうよ。仕事以外でもときどき遊びに来てるもの」
「いいなあ〜それって」
「ここなら日本から近いし、気候もいいしね」
 宇宙船だから同一惑星上だとあんまり遠いとはいえないけどね。
「飛行機じゃないか、そういや」
「まあね。さてと乗った乗った」

 レンタカーはトヨハタのセダン。ドライバーは私。ナビにメリー、リアに真希。
 地上車の運転は宇宙船に比べれば簡単よね。少なくとも数学と格闘しなくていいもの
ね。夕方の街を車は進む。そして。
「これがドジャー・スタジアムよ」
「おっきい」と真希。
「大きくて立派な建築物ね」とメリー。
 車をパーキングに止めて、私達はスタジアムへと向かいレフトスタンドにたどり着い
た。すでにスタジアムの7割くらいは埋まっているみたい。
 メジャーリーグペースボール(MLB)、日本では普通アメリカ大リーグっていう。
 (そのくせマイナーリーグのことを小リーグといわないのよね)
 トロント・ブルージェイズとモントリオール・エクスポズのフランチャイズはカナダ
にあるから多分メジャーリーガーってみんなパスポート持ってるわね。
 ベースボールは米国が世界の中心といっていい。ドジャースというチームは19世紀末
に誕生したブルックリン・ドジャースというチームが50年代に西海岸にやってきてロサ
ンジェルス・ドジャースと名前を変えた。ナショナル・リーグのウエスト・ディヴィジ
ョン(西地区)に所属している。ニューヨークからLAにきたのは別に身売りではないのよ
ね。
 MLBは、現在2リーグ、6地区、30チームから構成されている。日本は16チーム
だからずいぶん違う。ペナントレースはリーグ内の全チームと戦い1年162試合であ
る。(ただしストライキさえなければね。)
 MLBには日本や韓国と違って引き分けという妙なものはない。
 日本よりもシーズンが短くて試合数が多いからMLBのほうがはるかに日程的にはハー
ドということになる。各地区の1位、各地区の2位の中で最高勝率のチーム(ワイルド
カード)、合計4チームがプレーオフをやって2チームに勝てばリーグ優勝となる。
(3勝+3勝の合計6勝しないとリーグ優勝できないの)
 そしてリーグ優勝したチーム同士が戦うのはワールドシリーズ。7試合中先に4勝す
れば、めでたくワールド・チャンピオンとなる。
 金さえかければ歴史の浅いチームでもワールド・チャンピオンにはなれることはフロ
リダ・マーリンズが証明ずみね。

「えりなってそういえばドジャース・ファンだったね」と真希。
「ええそうよ。私はノマが活躍する前からだもん」
 ノマというのは日本のチームからドジャースを経ていまはメッツで活躍しているピッ
チャー。
「それにしても熱気がすごいわね」
「でしょ。友角スタジアムと全然違うでしょ」
「ええ」
 真希も私も、地元のプロ野球球団、友角アタッカーズのファンだったりする。ドジャ
ースと違ってものすっごく弱いんだけどね。そして試合が始まった。
 ゲームはシーソーゲーム。9−8でドジャースの逆転勝ち。日本だったら3時間越え
てるだろうけど、2時間40分しかたっていなかった。
「また来たいわね」と真希。
「そういってもらえると連れてきたかいがあるわね」
 夜の街を車はのろのろと進んでいく。さあてとどこで食事しようかなあ。

「・・・というわけでこちらが、ホースト・カレスラーグル教授よ。汎銀河連盟中央歴
史大学の」
 翌日昼。LAの北寄りのサン・フェルナンド・ヴァリーのどこかにある家。私たち3人
はカレスラーグル教授のところに訪問していた。紳士的な雰囲気の老人で眼鏡をかけて
いる。
「はじめまして」
「うむ。はじめましてじゃな」
 最初は仕事で会ったんだけど、なかなか面白い人で私はちょくちょく訪問している。
 今回LAにきた理由の1つは真希に教授のこと話したら会いたがったから。
 真希はアニメやSFのファンであり、実は歴史学者志望なのよね。
 2人は歴史について話がはずんでいるようなので、私はメリーと一緒にアイスコーヒ
ーを飲んでいたりする。そういや教授の日本語はかなりくせがあるのよねえ。
「・・・ところでその眼鏡ですけど、地球のですか」
「ああそうじゃよ。アクセサリとしてきにいっておってな。ちなみにレンズに度は入っ
とらんがね」
「ええっ。じゃあ目が悪いわけじゃないんですね」
「そうじゃよ。そもそも銀河社会の科学力をもってすれば、視力なんぞ簡単に修正でき
るからのお」
「眼鏡をわざわざかけてるのはじゃもしかして・・・単なる物好きってことですか」
「ほっほう。そういうことじゃな。まあ歴史学者なんてのは、昔のことを調べる物好き
の仕事じゃからの」
「確かに・・・そうかも知れませんね」

 別れ際。
 教授は真希がきにいったみたいで、住所と電話番号をおしえてくれといったの。
「いいわよ。えりな、書いてくれるかしら。私書き方わかんなくって」
「わかったわ」
 私は教授のハンディパソコン(もちろん非地球製よ)のパッドに書き込むことにした
 英語フォントがちゃんとインストールされてるのを確認してっと・・・

   Maki MATSUKAWA
   375,Yakata-machi,Tomokaku,
   Tokyo A935010,JAPAN
   Phone:+81-240-950-6647
   HandyPhone:+81-410-722-7739

「はいこれでいいわよ」
「ありがとう」
「それから教授。電話も携帯(ハンディホン)もサウンドオンリーですから」
「この星じゃまだヴィジィホンはあんまり普及してないんだったな」
「ええ。あるにはあるんですけど、結構しますから」
「そのうち、ギャラコムのハンディホンでもプレゼントしたほうがよいかな」
「・・・それはいい考えですわね」
「ギャラコムって何なの」
「ギャラクシーテレコム・インダストリーズっていう電話会社よ。私がいつも持ってる
携帯はギャラコムのカスタムメイドなの」
「へえええ。そうなんだ」
 外に出ればカリフォルニアのブルースカイ。
 このぶんだと「明日もお天気」かしらね。

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