「パイン&ライム」BLUESTAR ACT.2 アルディウム    「日誌 IE1124年3月12日。     惑星マルベスを出発。例によって平和で何事もない。星の輝き。そして平穏。     実に平和で退屈である。     ライムと会ってから2ヵ月。彼女は実に有能である。ただ性格に少し問題が    あるが・・・。     ところでマルベスからお客が1人いる。20歳くらいの少女で,ラズベリー・    アトファス・マーチ。惑星ドナケスに行きたいらしい。もちろん我々はその依頼    を引き受けた。・・・さて・・・」  突然ドアが開いて,ブリッジにライムが入ってきたのでパインは驚いた。  今のが聞こえなかっただろうかと思いつつパインはレコーダーを切る。  パインが今やっていたのは大昔のテレビドラマのまねである。  その作品では毎回船長が日誌を吹き込むシーンがあった。というわけでパインは子供 の頃の夢を実行している。もちろんライムもその事を知っている。 「おはよう,パイン」 「おはよう,ライム」 「そうそう。マーチに会って色々と話したけど・・・別に彼女は根暗じゅないわね。 ただ,必要以上の事を話さないだけみたい」 「しかし,マーチはただの民間人とは思えんな。どうも引っ掛かる」 「それじゃマーチは軍人だっていうの」 「茶化すな。そもそもドナケスは辺境で人口も少なく,産業もろくな産物もない小さな 星なんだそうだ」 「それは違うぞ」  とロボットのパイクが言う。 「ねえ,どう違うの」とライム。 「アルディウムとかいうレアメタル(希少金属)の産地だ。おまけに治安が悪く,シンジ ケートだのギルドだのギャングだのがたくさんいるそうじゃ」  とパイク。 「アルディウムってワープ・ドライヴに重要なあれのことなの」  と驚くライム。 「そうだ,ライム」とパイン。  ラズベリー・マーチは21歳。ありがちないわゆるお嬢さんというタイプではない。  自分の信念に生きる強い人である。めったに自分の意見を変えたりしない。  ・・・そして時が過ぎる。 「・・・それであと1時間で着くわけ」  とラズベリー・マーチ。 「まあね。もうすぐドナケスだ。立ってないでコーヒーでもどうだ」  そう言ってコーヒーを飲むパイン 「ところで,ラズベリー。どうしてあんな田舎に行くわけ」  ライムもコーヒーカップを持っている。 「それはちょっといえないな,ごめんライム」 「・・・ましかたないか」  宇宙ステーションからシャトルで地上へ。  ドナケスは,二重太陽のあるグバーケンド星系の第5惑星。  もちろん田舎なので人口は少ない。人口は85万人。そのほとんどが最大面積のア ーカランド大陸に住んでいる。 シャトルはドナケスの首都,ドノヴァンナに着いた。  どたばたして5日が過ぎた。  色々な調達や情報収集,ついでに観光。  どうやらマーチは一人で動きまわっているようでホテルでしか会わない。  パインもライムも不思議に思ったがたずねても無駄だから適当に観光していた。  その日マーチは言った。 「スレイダー・タウンまで行きたいけど・・・」 「スレイダー・タウン・・・210キロもあるぜ」  パインは地図を見て顔をしかめた。大陸の反対側にあるからだ。  ここは街の屋外レストランだった。空が青い。 「・・・遠すぎるかな」 「いや・・・そうじゃない。だが何しにいくんだ」 「・・・ちょっとね」 「ラスベリー。どうして私達にそれを聞くの」とライム。 「・・・だって私ランドカー運転できないから」とマーチ。 「・・・じゃ食べおわったらさっそく出かけるか」  パインはそう言った。  スレイダー・タウンへ行くには25号線を西南に行くのだ。  パインはレンタカーでやや古いランドカーを借り出した。  スピードはそれ程早くないが25号線はなにしろアップダウンが激しいらしいから。  アップダウンは激しいが道はほぼ直線だ。  太陽は生暖かく思える。 「この先のドライブインに入ってくれる」とマーチ。 「はいはい」  とパインはランドカーをドライブインへ。  そのドライブイン,グロスライトはどこにでもある平凡なドライブインにしか見えな い。入口のすぐそばのテーブルに3人は座る。  15分後。奥のテーブルに向かってマーチは歩き出す。  そこにはスーツを着た中年男がフィッシュ・アンド・チップスをつまみつつ ひそひそと会話していた。  2人は黒いケースとバッグを取り出した。 「・・・それじゃそういうことで・・・」 「カット!」  2人は驚いて女を見つめる。その女,マーチは2人を睨みつけて, 「アルディウムの不法取引の現行犯よね。そこまでよ」 「何を証拠に・・・」 「ちょっと調べさせてもらうわよ・・・」  マーチはそういいつつ勝手にバッグの中身を開けている。 「これはなにかしら」  それはどう見てもアルディウムの原石だった。 「純度100%のスーパー・アルディウムね。あんたたち極悪な連中ね」 「いったいなんのことだね,さっぱりわからん」 「マルベス連邦特別捜査官のラズベリー・マーチよ。逮捕するわ」  身分証をかざすマーチ。 「・・・なるほど・・・そういうことか・・・」 「そういうことよ,逃げないでね」  とにっこり。いつのまにか右手にはレーザー銃があった。  ・・・そしてレストランは大乱闘となった。 「あなたと会えて楽しかったわ,ライム」 「そうね。私もよ,ラズベリー」 「それにしても,あんたもなかなかだね」とパインに向かって。 「それはお互い様だよ,ラズベリー」 「「11時10分発,マルベス行9244便,まもなく出発します・・・」」 「それじゃお別れね。またマルベスにきたら連絡してね」 「ああ」 「またねー」とライム。  1124年3月24日。ラズベリー・マーチはスーパー・アルディウム盗難事件を解決して ドナケスを後にした。 //