<ラステニア・シリーズ4>    レリンクス・ブルー2   by BLUESTAR      レリンクスは奇妙な国である。      奇妙な国には当然奇妙な人が住んでいるだろう。        (アドル・ジャンダー,ギルダナラン暦715年) 1  AD1992年7月。夏の太陽が照りつける。  私はアルトで道路を走っていた。  今日もすでに30度を越えている。  やれやれ。  私は南崎江里(ミナミザキ・エリ),22歳。  今は東京都友角市在住。市内の山下町のハイスター・カンパニーに勤務している。  約2年前。1990年の冬だった。私はアルフ・ハイスターと出会った。  ハイスターは何と私が,異世界のレリンクス王国のプリンセスだという意外な事実を 教えてくれた。  そして私はハイスターと共にレリンクス王国へと向かった。レリンクスは青い海が印 象的な,明るい国だった。  その辺りで私は事実に納得せざるを得なかった。  そして,それ以来私はハイスターと会うことが多くなった。  そして,今,私はハイスターと一緒に仕事をしている。  どうしてだろう?  ともかく,私は日々を過ごしている。多少困惑しつつ。  東京都の西部,人口30万の友角市。この町はなかなかいい町である。  ただし,東京の都心からは少し遠いのが問題だ。  友角市は,東西に私鉄の友角鉄道(友鉄)が走っている。  昔はこんな町ではなかったそうだ。あいつぐ合併によってここまで大きくなったらし い。  この街にはなぜかプロ野球球団も存在する。パシフィック・リーグの友角アタッカー ズである。1975年創立で過去最高は4位。当然優勝経験はない。私はまあまあこのチー ムが好きだ。今年は今のところ5位。  友角市山下町,山下第3ビルB1にハイスター・カンパニーがある。 社長はアルフ ・ハイスター,35歳。この人の良さそうな中年が実はRIA(レリンクス情報局)の第 11局の局長である。  この事は意外であろう。RIAはレリンクス版CIAである。第11局の目的はこの地 球世界を調査することである。 「例のレポート,出来ましたよ」  とハーバーがフロッピーディスクを渡してくれた。彼は探偵事務所の仕事をしている 。かなり日本語が上手だ。 「早かったわね」 「これから休暇ですからね,さっさと終わらせたんです」 「当分こないのね」 「ええ。10日間です。マルグラードに」  マルグラードはマルグベラスの首都だ。 「それじゃ,事故に気をつけてね」  彼は故郷へ向かった。私は,自分のデスクの98DXでハーバーのレポートを読むこ とにした。  私の仕事は,アドバイザーで事実上ハイスターの秘書もやっている。  だからこういう事もしているのだ。  中条町にはハイスター・ショップがある。91年から始めた店だ。  レリンクスは銀の産出国で,当然銀製品が多い。レリンクス以外の国の物も含めて, 地球=アースで売ろうということである。  雑居ビルの2階にそれはある。昨年はやや赤字だった。  ハイスターがそこから戻ってきたのは,18:30だった。 「やあやあ,江里。見にいこうか」 「いいわ。行きましょう,アルフ」  アルフ・ハイスターの車は白のソアラ。  私はアルフとはプライベートにも付き合いがある。つまり,彼は私の恋人だったりす るのだ。どうして?なんて聞かないように。  着いたのは,アタッカーズ・スタジアム。友角アタッカーズのフランチャイズだ。今 日の試合は友角アタッカーズ×福岡ダイエーホークスらしい。  ホークスは6位,アタッカーズは5位。試合はすでに乱打戦。  まだ4回なのに6−6だ。やれやれ。  彼は実は大のベースボール・ファンだ。故郷ではレリンニード・ジャガーズ,日本で は友角アタッカーズ,MLB(北米のメジャーリーグ)ではヒューストン・アストロズ を応援している。  ・・・・やがて試合が終わった。時計は23時を過ぎている。12回で13-12だった。 2  約半月後,ギルダナラン暦732年8月。私はレリンクス王国の北部,ロセモリにいた 。ロセモリは人口20万の港町だ。  今は日本だと真夏でやたら暑い。丁度お盆の時期だ。  だがここは寒い。実に寒い。 「ロセモリって結構寒いのね」 「まあね。今はマイナス5度位かな」 「それで料理が辛いのね」 「多分ね」  そういうわけで私はアルフと共に,レリンクスを旅していた。  レリンクスと日本では季節がほぼ逆になる。  だからあまり頻繁に往復していると,風邪をひく。  空はどんよりと曇り,冷たい風が吹き付ける。  道路には所々雪が見られる。  静かなものだ。  ・・・・・・そして,青い空と白い雪。そんな光景。 3 「やっと着いたわね」 「こちらです」と,CIAのタルコフは言った。  ここはアメリカ,ワシントンDC。私とアルフはタルコフに連れてこられたのだ。1 週間前,RIAのバーナル少佐が,DT(ディメンション・トランスポーター)を勝手 に使用した。その結果,DTは3日ほど使用不能になった。 そして,行方不明になった。我々は捜索していた。そして彼はDTの使用を誤ったら しい。彼が出現したのは,ケネディ空港の滑走路だった。 彼はレーザーガンとナイフを持っていた。整備員の通報で彼は捕らえられた。  空港警察での取り調べはうまくいかなかった。英語がほとんど通じないのである。  それどころかスペイン語やロシア語や日本語なども通じない。  そのあと,どこかのスパイだろうということで,CIAに彼は送られた。  彼らは彼の手帳の住所欄で唯一読める文字を見つけた。    Alf Highster      T.81−240−958−7785  彼らは調べた。そして,ハイスターがロサンジェルス市民で,カリフォルニア州発行 の自動車免許証を持ち,日本在住であることを突きとめた。 かくして,ある日突然,私とアルフは捕らえられ,そして謎の人物の写真を見せられる。それはバーナル少佐だった。  「この人を知ってますね」「・・・ええ」「それでは来て下さい」  かくして,我々はグローバル455便に乗った。成田へ向かうクレスタの中で色々と聞かれた。そしていきさつを聞かされた。  「なるほど,彼は友人なわけですね」「多分ね」  「彼にはスパイ容疑がかかっています」「それは大変だな」  「彼は英語もほかのもほとんど,話せません」・・・・・・  「大佐。よく来てくれました」とバーナル。  「疲れ果てているな,エド」とアルフ。  「ここは何なんです。ここは。警察ですか」  「ここはCIAだ。RIAみたいな所だ」  「大佐,ほんとですか。どうしてこんな」  「エド,大佐と呼ばないように。これからは俺が通訳するから,英語は使うなよ。 ・・・もっともここの連中にブリタン語はわからんはずだがね」  やがて取り調べが始まる。  「名前と住所は」  「エド・パーク・バーナル。レリンクス王国レリンニード特別市ターセム区バイン・ ストリート901」とエドがいい,アルフが通訳する。 取り調べは,ほぼ終わった。 「ところで,レリンクスとはどこにあるんだね」  「パラレル・ワールドの彼方に」  「ジョークかね」  「青い水はどうです」 ??? 私はバッグの中から小さなびんを出して,叩き付けた。それは破裂した。やがて香り が広がった。それは幻覚剤だった。あらかじめ調整剤をのんでいないと,いきなり倒れ るほどだ。そして,過去数時間の記憶も失う。  そして,私達は逃げ出した。そこは「カンパニー」の本部から遠く離れた普通の家だ った。しかも関係者は全員一室にいたのである。  そして逃げ出したあと,私達は,ヒッチハイクしてケネディへ向かった。5日後,R IAニューヨーク支局からの報告。  ”エド・バーナルの件,処理完了” ・・・・・・そんな出来事もいまではささやかな想い出。  などと回想するこのごろ。 毎日が,ただ,忙しくすぎていく・・・ 「私はつくづく,奇妙な人生を送ってきたわね」  「まあね。それも人生さ」とアルフ。  「そうね・・・」  あのころとはなにもかもが変わってしまった。  そして,私はエリ・M・ハイスターは空を見上げる  レリンクスも,東京も,空は青い・・・・・・ 91/12/8