「ホワイト・エンジェル」BLUESTAR   ACT.1 サン・カナヴェラス    人類は何度目かの繁栄期にあった。    今まで繁栄した文明は,神話として後に伝えられた。    しかし,不思議なことに,その文明の残した文化遺産は,わずかしか発見されて   いない。    そんな事を暗黙のうちに秘めた物として,宇宙神話(スペース・ミサロジー)があ   るのかも知れない。    そして,いつの時代でも,そんな神話に魅せられて,夢を追う者がいた・・・    現文明で人類が宇宙に進出したのは,AD1969年の月面着陸であった。    AD2050年に,ようやく人類は統一政府を作り上げた。地球連邦である。    それを記念して新しい年号が制定された。 IE(地球統合暦 Integrated of Earth)である。    人類はやがて自らの星系であるソルを飛び出して,やがて汎銀河連邦に加盟。    そしていつしか人類は銀河系東部において主要な種族となっていった・・・  「・・・それでね,そこのチョコレートパフェがとってもおいしいのよ」  「・・・はいはい,わかったからちょっと黙ってて」  ブリッジの前の方にすわっている赤毛の女性がそういうと,サブスクリーンに通信 が入った。  「ステーションよりホワイト・エンジェル。貴船の入港を許可。14番スポットへ」  「了解。14番スポットへ向かいます」  彼女はそう言うと船のコースを入力する。  「・・・ストロベリー,もうすぐ入港よ。・・・ところでそんなにおいしいの??」  「ええもちろんよ,マスカット。うそだと思ってるわね」  「・・・あんたのいうこと信用しにくいもの」  「おいおい・・・」  宇宙ステーションでお決まりの入国審査。そして二人は地上へシャトルで向かう。  ここは惑星カナヴィクコア,カナヴェラス・カーズリー連邦。  連邦は銀河系東部でも有数の巨大恒星間国家である。  そしてサン・カナヴェラス宇宙港は,いつでも明るくにぎやかである。 IE1131年5月。久々にストロベリーはここにやってきたのだった。  二人は宇宙港のレストランで食事をとることにした。  二人が入っていくと,呼び声がかかった,奥のテーブルから。  「元気そうね。ライム」  「あなたもね,ストロベリー」  「・・・あの・・・この人たちなんなの」  マスカットは戸惑っている。  「ああ,そうね。紹介するわ。こちらの情けない男が,パイン・ボルナード」  「情けないっていうのは余計だろ」  「・・・それからこちらが,パインのパートナーのライム・カーマイン・ボルナー ドよ。結構楽しい人よ」  「・・・はじめまして」  ライムは軽く頭を下げる。  「で,こちらは私のパートナーのマスカット・マクランド。なかなか器用な人よ」  「はじめまして。・・・ところでこの二人ってもしかして夫婦かなにかなの」  「一応夫婦よ。まぁこんな男でも結婚できたっていうのがあたし今でも不思議だけ どね」  「・・・ちょっと。そこまでいうことないでしょ,ストロベリー」   とライムがたしなめる。  「ボルナードって・・・もしかして,これ,ストロベリーの兄なの」  「ええまあね。不肖の兄ですけど」  「こらこらっ」  かくしてこんな具合で四人そろって食事となった。  なにしろ四人とも同じミサロジーハンターなので話題には困らない。  「・・・それじゃライムもあちこちで活躍されてるんですね」  「ええそうよ,マスカット。でも私達なんてまだまだ。銀河は広いから」  「でもおどろいたなぁ。アロングバード5のあれってあなたたちだったんですね」  「ええまあね。まぁこういうことはおおっぴらに宣伝する事もないしね」  ・・・ワインやブランデーを飲みつつ話は延々と続くのであった。  ミサロジーハンターは,一般に「宇宙神話を追うもの」といわれる。  それはたとえば古代の遺物であったり,財宝であったり,遺跡であったり,技術で あったりもする。  ミサロジーハンターは,銀河に数多く存在しており,現在ではミサロジーハンター 協会なるものまである。もっともミサロジーハンターというのはもともとアウトロー な連中が多く,協会に所属していないものも多い。もちろんこの四人はちゃんと協会 に加盟している。  またミサロジーハンターの多くは考古学者でもあることが多い。  いろいろと古いものを探しまわっている内にすっかりはまってミサロジーハンター になってしまうものも少なくない。  「ところで今回はなにしにきたの,ストロベリー」  「仕事よ,仕事。たまには大学で講義しないとね」 「・・・そういや,サン・カナヴェラス大学の非常勤講師だったな,おまえ」  「パイン,忘れてたなんていわせないわよ」   とストロベリーがにらむ。  「わかったわかった。まぁ伊達に博士号持ってるわけじゃないってことだな」  「えっっ博士号ですって・・・。私聞いてないわよ」   とマスカット。  「ストロベリーは,サン・カナヴェラスで比較歴史学の博士号取ってるんだよ」  「へぇぇ。なんかすごい」  「ふふふふふ。あでもね,それだけじゃ星を飛び回ってきままな生活ができない でしょ。だからミサロジーハンターになったのよ」  「・・・・・・」   マスカットは目を点にしてあきれている。  翌日。サン・カナヴェラス大学でストロベリーは久々に講義をした。  今回は二週間の短期集中講義というやつで,地球とボグレニアの歴史発達とかいう テーマだ。  一方マスカットは街でショッピングに走った。  サン・カナヴェラスはかなりの大都会で,おっきなモールがずらずらとならんでいる からみるだけでも楽しいのだ。もちろんいろいろと買いまくっているのである。  「さぁて,つぎはどこにしようかなっと」  「ストロベリーもいいパートナーを見つけたな」   遠くからマスカットをこっそり見つめるパイン。  「そうね,パイン。あれなら安心して任せられるわ」  「じゃそろそろいこうか」  「ええ」   そしてパインとライムは宇宙港へと向かった。 //