「ホワイト・エンジェル」BLUESTAR   ACT.2 スタイナー  IE1131年6月。  カナヴェラス・カーズリー連邦の辺境にある惑星マリスタン。  マリスタン中央宇宙港のレストランは静かだった。  「それでね。・・・やっぱりそう思わない」  ストロベリー・ボルナードはおっきなスパゲティを食べている。  「はいはい。だからあっちに賭けてりゃ良かったていうんでしょ」  アップルティを飲んでいるのはマスカット・マクランド。  「ええそうよ。ったくもう」  「あの・・・すいません」  そんな2人に青年がふいに声をかけた。  「ねえねえキーウッド行がおくれているって聞いたけど本当なの」  宙港のユニオン・スターラインのカウンターにマスカットがたずねた。  「ええ。ポリディアでエンジントラブルです」  「どのくらい遅れるの」  「・・・ええとその」  そこにヴィジホンが入った。  「はいマリスタンです。・・・はい。・・・なるほど。わかりました。では」  亜空間通信らしくかなり画面にノイズがある。  「いまのなんだったの」  「ポリディアから連絡が入りました。約70時間の延着ですね。船の整備をしなきゃ ならないようですから」  「ありがと」  マスカットは振り向いて,  「・・・聞いてのとおりよ,さっさといきましょうか」  「私はフレッド・スタイナーです。よろしく」  「船長のストロベリー・ボルナード」  「マスカット・マクランド」  にこにこと握手する。  「70時間も待つわけにはいきませんからね,ぶっ飛ばしてください」  「ええわかったわ。まかしてね」  スタイナーはある会社の輸送係。ある重要な機密書類をキーウッドまで届けるために ユニオン・スターラインの船に乗る予定だった。だが船の延着ということになり,とて も待つわけにはいかなかった。・・・かくして彼は別の船に乗ることにした。  とはいえ,ポリディアはなにしろ田舎なので次の船はなにせ6日後である。  やむなく,スタイナーは宇宙港の案内所でミサロジー・ハンターがいることを知り, ・・・かくしてホワイト・エンジェルに乗ることにする。  ホワイト・エンジェルはすぐに出発して,さっさとワープに入った。  「キーウッドへの到着は85・4時間後よ」とストロベリー。  「・・・へぇ。すいぶん早いですね」とスタイナー。  「まあね。このホワイト・エンジェルはかなりチューンしてあるから」  「それにしても驚いたなあ。これだけの船がたった2人だなんて」  「・・・じつはね,エンジンがめちゃでかくてね。それでねこうなったの」  ブリッジにコーヒーを持って,マスカットが入ってくる。  マスカットはコーヒーを注いで,  「・・・はい,どうぞ」  「どうも」  「もっと急がなくていいのかな」  「ええ・・・これで十分ですよ」  スタイナーはそういってかすかに笑った。  3日後,夜中の03:14。  「・・・ふわあああ。どしたの,マスカット」  寝ていたところを叩き起こされたのであくびをしているストロベリー。  「船長に通信よ,出て出て」  「通信ですって。こんなところで」  なにしろここは定期航路から大幅に外れている。  こんなところを通行するのはよほどの物好きだ。  ぼやきつつもブリッジにいくストロベリー。  そしてブリッジ。立ったままで,  「こちら,船長のストロベリー・ボルナード。何の用かしら」  「「こっちはブラックホークだ。スタイナーをわたしてくれ」」  「どうして」  「「きまってるだろう。やつの書類が欲しくてね。悪く思わんでくれ,これも仕事 なんでな」」  「ほーほっほっほっ。こっちだってスタイナーを運ぶのが仕事よ。あんたたちになん かわたしたら違約金取られちゃうわ」  「「・・・じゃしかたないな。そっちに乗」」  いきなりストロべリーは通信をカットした。  そしてブラックホークの船が向かってきた。  マスカットは,フェイザーを2,3発打つと,船の方向を変えてそのまま最大ワープ に加速した・・・  「おはよう。どうよく眠れたかしら」とマスカット  「なんか揺れてましたけど・・・」  「まあね。ブラックホークとかいうあやしいフリートレーダーから逃げ回ったから」  「えええっ。そんなことが・・・」  「まぁぶっちぎって逃げたけどね。この船って実はとっても早いのよ」  「(・・・まずいな)」  「なにかいったかしら」  「いえいえ」  マスカットはスクリーンをチェックして,  「ということで,5時間後にはキーウッドにつくわよ」  「それはよかった」  「ただし・・・またブラックホークとかが出てこないなら・ね」  もちろんブラックホークはまた登場した。  それもよりによってキーウッドの軌道上に。  ・・・それでもなんとかホワイト・エンジェルはキーウッドにたどりついた。  そして書類は無事届けられたのである。  「ご苦労さまでした。これが報酬です」  といって,小切手をわたしてくれた。  「・・・しかしあいつらしつこかったわね」とマスカット。  「ええ。おかげで大事な船がポロポロよ。ったくもう」とストロベリー。  「修理に金かかりそうね」  「ま・・・しかたないわね」  「それじゃ私はこれで失礼します」  「じゃあね」とストロベリー。  そして結局最後まで,2人は書類の中身を知らなかった。  もちろんそれも仕事の条件だったのである。  もちろん2人が興味を持ったのはいうまでもないが・・・報酬はその分上積みなので それでいい,と2人は納得している。そういうものだ。  後で報酬より船の修理代の方が高いことがわかったので,2人はため息をついたので あった。  「あぁ・・・もっともらえばよかったぁぁぁ」  そしてストロベリーは悲鳴をあげた。 //